いわゆる座間9遺体事件の発覚・容疑者逮捕から今月末でちょうど丸1年になる。いまは起訴されて被告になっている白石隆浩(28)についても、事件そのものについても不思議だと思わせられる部分は少ない。
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世間の関心が高いのは、2017年8月22日から10月30日までの約2ヵ月間に9人を殺しその遺体をバラバラに損壊したというそのしでかし方が激しく、またマスコミの取材に対して金銭を要求するなどまったく反省や悔悟のようすを見せていないことによるものだろう。
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ちなみに白石隆浩の犯罪は連続殺人(serial murder)であり、大量殺人(mass murder)と呼ばれるのは1度に多数の人間を殺害した場合である(FBIの定義では1日以内に4人以上・Wikipedia)。
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また白石隆浩は「女性たちは『死にたい』と言っていたが、会ってみると本当に死にたいと思っている人はいなかった。私がしたことは殺人です」と供述しているので、自殺幇助、自殺教唆にはあたらない。
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起訴内容は女性8人全員に対する強盗・強制性交等殺人罪、強盗殺人罪、死体損壊・死体遺棄罪、男性1人に対する強盗殺人。どう考えても極刑は免れ得ない。
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ワタクシの考える白石隆浩像をまとめてみよう。最近のようすを『女性セブン』2018年11月1日号が取材している。金を払ったのだろう。↓
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◆『NEWSポストセブン』2018年10月20日配信
【座間バラバラ被告、赤裸々告白するも唯一口を閉ざす話題】
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神奈川県座間市のアパートの一室で9人を次々と殺害した容疑で、白石隆浩被告(28才)が逮捕されてから10月31日でちょうど1年が経つ。東京・立川拘置所の面会室、アクリル板越しに座る小柄で華奢な男が白石だ。髪は耳下まで伸び、口ひげ、顎ひげは生やしたまま。顔色は妙に白い。上下黒の服装で、にじり寄るように前のめりに話す。
白石が被害者たちと知り合ったのはSNSサイト。「死にたい」と投稿していた若い女性たちに「一緒に死ぬ」などと書き込み、自室へ誘い込んだ。睡眠薬や酒を飲ませた後、首を絞めて気絶させて強姦し、ワンルームのロフトから下げたロープで首を吊って殺害。その後、遺体をバラバラに切断し、遺棄した。
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犯行の理由について、「ただただ『欲』に突き動かされて、です。具体的には、金銭欲と性欲を満たすため。殺したのは、殺人や死体損壊の願望があったわけではないです」と語った白石。「強引な性交をしてから女性を生きたまま帰すと、一度逮捕された身だからすぐにしょっぴかれる。証拠隠滅のために殺しました」と、あまりにも身勝手な動機だ。
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時に丁寧な言葉を使いながら、大声で笑いながら、身振り手振りを交えて、饒舌に語る。犯行に対して後悔することはないかと問うと、
「唯一、後悔することがあるとしたら最後の被害者の携帯の電源を切り忘れたこと。これは完全に、私の油断。最初の方は証拠隠滅にすごく気を使っていましたが、人間とは不思議なもので、徐々に慣れてしまうんです」
と言う。9人目の被害者の携帯電話が発した電波によって、犯行現場となったアパートの位置が特定され、逮捕につながったからだ。なぜここまで赤裸々に語るのか。
「それは検察、警察、そして私の味方であるはずの弁護士にも『申し訳ないけれど、諦めてほしい』と言われました。それを聞いて、『だったら最後にうまいものを食って、欲を満たして、極刑になってやろう!』って!」
面会中、白石は「お金」に対する執着をたびたび見せた。面会に来た記者に、「お金をくれたら事件のことを全部話す、お金があればチョコレートやカレーなどが買えるから」 と発言したと報じられたが、本誌記者にも、指でお金のマークを作ってニヤリと笑って見せた。
また、送検時はマスコミは顔を手で覆っていたが、「このときに顔を隠したのは『何で勝手に写真撮っているんだ、撮るならカネ払え!』と腹が立ったから」と語った。
しかし、「何でも聞いてください」「私のことをどれだけ叩いてくださってもかまいませんし、何だったら他社に売ってくださってもかまいませんから」と豪語していた白石が頑なに口を閉ざした話題がある。1人の女性についてだ。
白石の誕生日である10月9日、20代前半とみられる女性が泣きながら接見に訪れていた。列をなして接見を求める報道陣を続々と断り、白石がこの日面会したのは、彼女だった。長い黒髪の小柄な女性で、黒いキャップをかぶり、白いフード付きのパーカに、白いミニスカート、白いソックスという全身白ずくめは面会室の中でも一際目を引いた。
白石の誕生日祝いなのか、手にケーキの箱を持っていたが、職員に「それ、持って面会室には入れないよ」と注意を受けていた。鏡を見て、念入りにグロスを塗り直し、彼女は面会室へと入っていった。
後日、彼女について白石に聞くと、これまでの饒舌が一転、黙り込み「それは答えられません」とうつむいた。
「何を言うか…と思うでしょうが、たとえどんなにカネを積まれても、あの子のことだけは話せません。こんな凶悪犯の私にも、やっぱり、大切な存在っている。そんなことです…」
その言葉を受け、最後にもう一度聞いた。あなたが手をかけた9人にも、あなたが「彼女」を思うように大切に思っている人がいたということに、なぜ今もなお思い至らないのか。
「それは欲の対象と、大切にしたい人ははっきり線引きされているので、正直、謝罪の気持ちもないし、本当になんにも思いません」
また同じ話か、とうんざりした口調だった。》
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一部には犯行動機を「金銭欲と性欲を満たすため」といいながらも、実際の被害者はいずれも10代や20代でそれほどの金額を所持していなかったことに違和があるとする議論もある。しかし白石隆浩はたとえば海外に高飛びできるほどの大金は最初から求めておらず、その日その日をしのげればいいという感覚ではなかったかと思う。
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これには2つの要素が絡んでいると想像する。ひとつはこの世の中に対して捨て鉢になっていたこと、もうひとつは想像力の欠如、というよりも触覚が短いといったほうがふさわしいような思考のあり方、である。
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なぜ捨て鉢になっていたのか? 白石隆浩は2017年2月に職業安定法違反の疑いで茨城県警に逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が確定している。新宿歌舞伎町で風俗店などに女性を派遣する仕事、要するに違法なスカウトで逮捕されたのである。記事にある本人のコメント「一度逮捕された身だからすぐにしょっぴかれる」はこのことを指している。
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Twitterを利用して自殺願望をもつ女性たちと交流しはじめたのはこの翌3月からであり、また同時期からインターネットで自殺に関する知識を得ている(Wikipedia)。ここから最初の殺人を犯した8月22日まで約5ヵ月。ほとんど仕事をしていなかったこの期間に、自殺願望をもつ女性を殺して金を得ようと企むようになったのだ。
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幼少期の白石隆浩はおとなしく目立たない存在で、中学生になっても穏やかで争いを好まず、成績はあまり良くないものの休まず真面目に登校し、ルール違反もしないという生徒だったらしい。
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高校在学中からスーパーでアルバイトをし、2009年に神奈川県内の商業系高校を卒業したあとも正社員としてスーパーで働いていた。2011年10月(21)に自己都合で退職。電子機器販売会社を半年ほどで辞め、その後、職を転々とし24歳ごろからパチンコ店で働いた。
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家族は両親と妹の4人家族だったが事件発覚の数年前に妹が有名私立大学に入学したのを期に母親・妹の2人が家を出て別居している。
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高校卒業後、白石隆浩の人生のなりゆきはゆっくり下降線をたどる。そしてそうするとやはり決定的な契機になったと思われるのは2017年2月の逮捕と執行猶予付きの有罪の確定であろうと思われるのだ。
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職業安定法違反は以後の連続殺人に較べればあまりにもささやかな犯罪ではあるけれども、小柄で華奢、穏やかで真面目でルール違反もしない少年であった白石隆浩にとって、逮捕された事実はたいへん大きな意味をもっていたように思う。
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「強引な性交をしてから女性を生きたまま帰すと、一度逮捕された身だからすぐにしょっぴかれる。証拠隠滅のために殺しました」という最初の殺人の動機についての供述からも、このことが色濃く影を落としている様子がうかがえる。
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職業安定法違反で逮捕され有罪が確定したとき、ついに一線を越えてしまった!! と白石隆浩は考えたのではないだろうか。大袈裟なようだけれども、本来気が弱く穏やかな、決まりをよく守る人物がなにかの弾みで経歴にキズを負うようなことがあれば、それはすなわち“道を外れてしまった”ことになり、もう2度とまともな道には戻れない、取り返しがつかないという絶望につながっていくのだ。
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たとえば高校時代に1年間留年してしまったというだけで猛烈な疎外感、孤独感、劣等感に苛まれ、結局グレてしまうということだってよくある。他人事としてみれば別にどうということはなくても、本人にとってはたいへん切実なのである。白石隆浩という男はそういうヤツではなかったか。実際問題、世間の同調圧力の強さは世間の外に出てみないとわからないものだ。
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したがって2017年2月の逮捕と有罪の確定のあと、自殺願望をもつ女性たちと交流をはじめ、また同時にインターネットで自殺に関して調べていたのは実は最初は自分が自殺するためだったのだ、と疑うことも十分にできる。
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誕生日に全身白ずくめでケーキの箱を提げ面会にきてくれた彼女は、白石隆浩にとってほぼ唯一、まともな道への希望であったのだろう。
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次は想像力の欠如、短い触覚についてだ。ふつうの人間が何事かに対応するとき二手先、三手先まで読むのがあたりまえだとすれば、この男は一手先までしか読んでいない感じがする。
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「強引な性交をしてから女性を生きたまま帰すと、一度逮捕された身だからすぐにしょっぴかれる」→「証拠隠滅のために殺しました」。ああ、よく読めばしょっぴかれるのを防ぐためには「女性を消せばいい」→「女性を消すためには殺さねばならぬ」というプロセスがある。「証拠隠滅のために殺しました」というのはそういうことであろう。
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とにかく殺したその先がない。やがて逮捕されるだろうという読みがない。読みがないから次々に何人も殺してしまう。殺人を重ねればそのたびに捕まる可能性は飛躍的に高まるのに。
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弁護士にも見放されたと知ったとき「だったら最後にうまいものを食って、欲を満たして、極刑になってやろう!」と考えたというのも触覚の短さを物語っている。ことの本質を考える前に条件反射的に動く。反応は早いが俯瞰して見ている鳥には簡単に見つけられすぐに捕まってしまう昆虫のようだ。最近、こういうタイプの人間が増えている。間違いない。
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「金銭欲と性欲を満たすため」といえばいっぱしのようだが、白石隆浩の犯罪を犯罪そのものとしてみれば非常にプアである。でも世の中も人間もそういうプアな方向に流れていることも事実だと思う。(了)
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