2018年10月27日土曜日

お笑いで一生台無し。ただ売れないだけじゃなくて



笑いをテーマに考える。自分がどうして笑うのか知りたいし、笑いの構造、笑いの法則みたいなものを整理して、分析的にお笑いを見てみるのも楽しいかな、と思うのだ。



Wikipediaで「笑い」の項を引くと、いまのところ笑いとは「構図のずれ」と「緊緩理論」によるものと考えられている、とまとめてもいいようだ。「構図」というのはこの場合、おおまかな図や図式や計画のことを指す。あっちの言葉で「絵図」というヤツだ。



お笑いコンビの名前「やるせなす」がおかしいのは、「やるせな」まできてとうぜん次は「し」または「い」「く」などでさらに字句が続くと想定されるところに意表を衝いて「す」が出ていきなり完結してしまうことの「構図のずれ」である。



一方、不細工を自認する男がはじめてデリヘルなるものを呼び、顔を合わせた途端嫌われるのではないかと気をもんで待っていると、デリヘル嬢がやってきた。恐る恐るドアを開けるとなかなかの美人。しかもイヤな顔もせずつかつかと部屋に入ってくる。ほっと胸を撫で下ろしてソファに腰掛けていると、デリヘル嬢、くるりと向うをむいて床にバッグを置いたと思った瞬間、目の前でブフッとオナラをした。



この緊張と緩和の入れ替わりが「緊緩理論」の実際である。顔面めがけてデリヘル嬢のオナラを放射されたのはワタクシではない。



うむ。これで、おお、これは「構図のずれ」だな、こいつは「緊緩理論」だ、とある程度お笑いを分析できるようになった。としよう。これは観客側からの分析、観客のなかで起こっている反応の分析である。



演じる側としては、ではどういうテーマをどういう基準で選べばいいのか、どういうストーリーの展開にすればよいのか、という分析も欲しいであろう。観客側としても知っておくとより深くそのお笑いの構造を知ることができる。



Wikipedia「笑い」中の「笑いの分析」に「笑いには攻撃的なものと愛他的・親和的なものの二つがあるとされている」という記述がある。「愛他的・親和的な笑い」とはたとえば可愛い子どもやペットを見たときの笑いで、これは英語ではSmileに該当する。



「攻撃的な笑い」とはたとえば千鳥足の男がついに転んだのを見たときの笑いで、対象に対する優位性、優越性を土台にしている。英語ではLaughになるだろう。お笑いが取り扱うのはとうぜんこちらのほうである。



笑いに2つのパターンがあれば、お笑いの対象にも2つのパターンがある。ひとつはそのストーリーのなかに出てくる架空の人物や動物などの場合である。落語の登場人物はまさにこれだ。



もうひとつは演者その人自身の場合である。たとえばアホの坂田利夫大先生(77)やナダル(33)のように、天然などといわれる方々である。これが本人が意識的につくっている割合が多くなればキャラクター芸人などという呼ばれ方をする。ゆりやんレトリィバア(27)とかくっきー(42)とか。



さて、 対象に対する優位性、優越性を土台にしているLaughであるから、架空の人物であれ演者その人であれ、対象への目線は必ず注がれる。つまりからかう、バカにする、軽蔑する、などがお笑いの本質には否応なく関わっているということがいえる。



ここから端的にいえば、笑いの取れる話とは、観客に罪悪感を感じさせずに人を軽蔑したりバカにしたりできるもの、差別意識を満足させるものということができるのではないか、とひねくれたワタクシは思うのである。



よく笑うとストレス解消になり、ナチュラルキラー細胞を活性化させるなど健康によいといわれるけれども、笑いの本質はダークなのだ。歯を剥き出して笑う行為には目の前のその対象を喰えるぞという意味が潜んでいるという話をここで以前したこともあると思う。



笑い、お笑いは恐ろしい。落語家としての腕が十分にあればその噺の登場人物を笑いの対象にして観客を笑わせることができる。しかし落語家としての腕がない場合、そしてそれでも高座に上がり続けなければならない場合を考えると辛い。自分自身を人身御供に捧げるしかないからだ。



「緊張と緩和」を説いた桂枝雀(享年59)も決して芸のない人ではなかったけれども、顔を崩したりタコ踊りみたいなことをしたり、自分自身を笑いの対象として捧げているところがあった。



そしてやがて鬱病になり高座で「『色んなことを試みてるうちに、自分の落語が分からなくなってきた』と泣いたりすることもあったという。客は冗談だと思って笑うと、本人は涙を流しながら否定、それが客のさらなる笑いを誘う、という悪循環に陥った」(Wikipedia)こともあったらしい。



結局、桂枝雀は自宅で首吊り自殺を図り、未遂で発見されたものの意識が戻らぬまま死んでしまっている。



お笑いはかくも恐ろしく残酷なものだ。その道は際どい綱渡り。無自覚でいるととんでもない事態を招来しないともかぎらない。強い立場の人間はとくに気をつけていただきたい。松本人志(55)とか。(了)





楽天カードでポイントゲット
申込はこちらへ



【通販限定】ヤクルトの基礎化粧品・イキテルの化粧水が半額!



ノッツェ 無料パートナー紹介






0 件のコメント:

コメントを投稿