小学校3年のときに転校してきたヤツがいて、はじめての朝、教壇に立っているのを見たときはなんだか貧相でビンボ臭いヤツだなと思った。小さくて丸刈り頭のテッペンが尖っていてウッキッキー!! なんてそこらを跳びはねそうだったし、おまけに漫画に出てくる中国人みたいな顔をしていたので、これはオレの相手じゃないな、と思った。正直、オレはクラスでいちばんモテてたんだ。
ところが参ったことに、これがヤバいくらいの金持ちのガキだった。休み時間に「昨日の夜、自家用機でハワイから帰ってきたところ」なんてクラスのヤツと話しているのを小耳に挟んだときにはなにいってんだコイツ、アタマおかしいのか? と思った。しかし、そういや確かに日に灼けている。真冬なのに。
クラスのみんなもその話にはまともに乗れなくて、とはいえ転校初日の、要するに初対面なのでしつこく追究することもなかったんだけれど、下校時間になって騒ぎが起きた。玄関で靴を履き替えようと前屈みになったソイツのランドセルから札束がポロリと落ちたんだ。
めざとく見つけた女の子が「それ、おもちゃでしょ」といったら、「おもちゃじゃないよ、あげるよ」とにっこり笑って差し出したらしい。なにしろクラスでイチバンの美人だったから。目があまり大きくないのでオレのタイプじゃなかったけど。
そのときはさすがにその女の子、気持ち悪がって受け取らなかったそうだ。あとでこっそり受け取っていたというウワサはあったけど。どうなのか、ほんとうのところはわからない。
それからは毎日毎日“驚きの金持ちニュース”の連続だった。ガキのくせに腕時計は1000万円のバテック・フィリップだとか、送り迎えがロールスロイスだとか。着ているものもソイツが着ると貧相にしか見えないんだけど、どこそこのなに、ってものらしい。
でもってまたソイツがひとつひとつひけらかす。
「別に自慢しているわけじゃないんだよ。でも、やっぱりいいモノってつくった職人さんのスゴい技術や情熱がこもっているから、みんなにも直接ホンモノを見てさ、知ってもらいたくてさ」
こっちはいってみればただの小学3年生のガキだから「はあ〜」「ふう〜ん」てなもんで感心していたけど、そのうちだんだん鼻についてきた。チビで猿みたいなくせにモテてたし。「昨日、ロールスロイスで動物園に行ってきたわん。いやん、そんなんじゃないんだけどね」みたいな。ヤラシイ話でっせ、って小学校3年生のオレでもマジ思ったね。結局、女は金かあ〜。
そんなことが1ヵ月ほど続いて、みんな金持ち野郎をチヤホヤしつつ内心ではうんざりしきったころ、ちょっとした揉め事が起きた。
「オレはおまえとは違う」
いつものようにみんなに取り巻かれて、そのときはアンティークのトランプカードだかをご開陳していた金満ガキに、クラスでイチバンの貧乏人の息子がはっきりと強い調子でいった。金満ガキは突然のことに呆気にとられて貧乏人の息子の顔をまじまじと見詰めていた。
「オレはおまえとは違う」
貧乏人の息子はその視線を真っ直ぐに受け止めてもう一度ゆっくりいい、踵を返して教室から出ていった。気のやさしいヤツだったから固くなったその場の雰囲気にいたたまれなくなったのかもしれない。
気まずい空気が流れて、取り囲んでいた子どもたちの輪が少しづつ、のろのろと崩れはじめたとき金満ガキは気を取り直すようにいった。
「でもほらスゴいだろ。エグベルトってドイツの版画家がデザインしたんだ。オリジナルだよ。レプリカじゃないよ。高いんだ」
いつもなら人懐っこい声でさらに説明が続くはずだったけれどこのときはここまでだった。突然ウッといって腹を押さえ蹲ってしまったからだ。イワオと呼ばれていた背の高いヤツが食らわせたのだった。正義感が強い、いわゆる漢だった。
「モノがいいのはわかったけど、おまえはうるさい。うるさいのはダメだっちゅーことも教えてやれや」
その日以来、金満ガキは学校に来なくなった。先生が親の仕事の都合で転校していったと説明したにもかかわらず、なぜかみんな信じていなかった。そのうち奇妙なウワサが広がりはじめた。金満ガキは月へいったのだ、と。
いつも金満ガキを遠くから見ていたオレは、また誰かに先を越されてしまったと口惜しくなり、それから、できるだけ金とは無縁で生きていくにはどうすればよいかと真剣に考えるようになった。
クラスでイチバンの美人は、夜になるとベッドに寝そべり両手をアタマの後ろに組んで、子供部屋の窓から月を眺めているらしい。
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これはコレ(↓)を読んだからのもちろんつくり話。
《 貴重なバイオリンなどを購入し、シェアしたい理由について前澤さんはツイッターで8日、
「それを見たり触ったりした人が『すげーなこれ、作る人カッコいい!』って、生産者が憧れになって、特に子供たちが『いつか僕も私もこんなの作ってみたい』って思ってくれると素敵だから。大人が『成金趣味だよ』の一言で子供たちの夢壊さないでね」
と思いを語った。購入したアートや車、宇宙旅行を公開していくのは「とんでもないモノ見たり触ったりした子供たちが、とんでもないモノを作る生産者になる未来を想像して」いるためだそうだ 》
※『キャリコネニュース』2018年10月9日配信
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ま、それはそれでいちおう意味はわかるけどいちいち自分が出てくんな!! というお話ですね。そういえば前澤友作(42)はこんなことまで語っていたそうで。
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◆『スポーツ報知』2018年10月7日配信
【ZOZO前澤社長、アンチの人たちへメッセージ「こっちにおいで。抱きしめてあげる」】
《 ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの前澤友作社長(42)が7日、自身のツイッターを更新し、SNS上で様々な現象や人物を傷つけるコメントを発している人たちにメッセージを送った。
前澤氏はツイッターで「いろんなアンチの人いると思うんだけど、匿名とか非公開アカ作って、社会と切り離された安全な場所から、わざと人を傷つけるコメントして、自分の存在価値を確かめようとする人たちいるじゃない」とつづった。
その上で「なんか無視できないんだよね。こっちにおいでって思う。抱きしめてあげるから。家族になろうよって」と呼びかけていた。》
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結婚もせず複数の女に子どもを産ませているおまえが「家族になろうよ」って、なにをいうておるのか、という話ですよ。おまえの“家族”の定義は笹川良一と一緒か? 世界は一家 人類はみな兄弟。
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「社会と切り離された安全な場所から、わざと人を傷つけるコメントして、自分の存在価値を確かめようとする人たち」と、「世間と切り離された安全な場所から、わざと人の神経を逆撫でする行動をして、自分の存在価値を確かめようとする人」と、どれほどの違いがあるのかというお話でもありますね。
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そんなおまえに繁殖期のカエルみたいに両腕両脚広げて「こっちにおいで」っていわれてもいくわけないじゃん。妊娠したら困るもん。(了)
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