「元少年A」には振り回されるのである。「元少年A」について書くのはこれで3回目である。前の2回は今年9月上旬に開設された、「元少年A」公式ホームページ『存在の耐えられない透明さ』についてのものだったのである。しかし1回目の記事はすでに削除しているのである。
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1回目の記事では「元少年A」の公式ホームページを覗いた感想として、「元少年A」は自分を犯行当時の「少年A」とは別人だと認識している、というふうにとらえたのである。
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2回目の記事では、しかしその後、ホームページの制作には誰か協力者がいた可能性があると気付いて、「過去の自分は他人」説を撤回したのである。わずか数ページのうちに見られるレイアウトの違和感も含めて、今度は本当の別人=協力者がいると想定したのである。
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なぜ1回目、2回目の記事でそう考えたのかといえば、あまりにも他人事めいた書き方が随所に見られたからである。たとえばホームページのトップには「『絶歌』出版に寄せて」という文章がある。これがまったく広告風なのである。一部抜粋しておくのである。
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《(前略)事件から18年。「冷酷非情なモンスター」の仮面の下に隠された“少年Aの素顔”が、この本の中で浮き彫りになっています。
「少年Aについて知りたければ、この一冊を読めば事足りる」そう言っても差支えないほどの、究極の「少年A本」です。
一人でも多くの方に手に取っていただければ幸いです。》
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また、このホームページが別の人間によって管理運営されているのであれば「公式ホームページ」というたいそうな権威付けも納得できると考えたわけである。
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そして3回目の今回、再びの訂正である。「元少年A」は、過去の自分とその犯罪を「作品」扱いしているのである。1回目の感想に近いところまで揺り戻された感じである。これは、この10月12日からはじまった「元少年A」の有料ブロマガを検討材料に加えての結論である。
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問題にしているのは「元少年A」の現在の心理である。であるからあまり重要ではない話なのではあるが、2回目の記事を書いた時点ではまだ協力者がいた、と私は考えているのである。
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この記事を書くにあたって、改めて公式ホームページ『存在の耐えられない透明さ』を覗いてみたのである。するとレイアウトが大幅に変わっているのである。変わっているというよりレイアウトと呼ぶべきほどのものはなくなっていて、ただテキストを流した感じなのである。つまり誰か別人の手を離れ、完全に「元少年A」の管理運営に移行したようなのである。原稿内容は変更されていないのである。
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あと、ホームページが以前と変わっていたのは、トップページの写真である。おそらくは移送車の下をくぐって撮影されたサンダル履きの足もとの写真から、上に伸ばした裸の左手の写真に替えられているのである。また、記憶に間違いがなければ、「存在の耐えられない透明さ」の筆による縦書きのタイトルの改行が、以前の、そして通常の右から左へではなく、その逆に変えられているところである。任三郎である。
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で、有料ブロマガ『元少年Aの“Q&少年A”』である。購読料は月額800円で隔週月曜日に配信の予定なのである。しかしいまなら10月12日創刊号がタダで読めるのである。
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「誰でも気軽に覗けるホームページ上ではなく、元少年Aとよりディープに、魂の触角と触角が絡み合うようなやり取りができるよう、新たに別な場所を設ける」というのが立ち上げの趣旨である。絡み合いたくない私は、これからは気軽に覗けないのである。
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読者とのQ&A集が月に2、3回送られてきて800円というのも少々お高いのである。たとえば「ナメクジはあなた自身の象徴なのでしょうか? 」という質問に「元少年A」はスルーである。創刊号からしてすでにコアな質問には答えていないのである。世間話に月800円は高いのである。この私のブログなど、なんとタダなのである。800円もあればナメクジ殺虫剤『ハイポネックス ナメトール』を買ってまだおつりがくるのである。
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しかし、タイトルにも見られる自己顕示欲の強さにイラッとさせられてしまえば、中身はふつうである。『元少年Aの“Q&少年A”』ではなくて、もっと単純に『Q&元少年A』で意図もシャレも十分に伝わるというものである。わざわざ「元少年A」をかぶせる必要はないのである。
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中身がわりとふつうであるぶん、印象は「マイルド酒鬼薔薇聖斗」である。「リア充オタク」とか「マイルドヤンキー」とか勝手に錯乱した命名をする博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平(38)をマネしてやったのである。
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闇、暗黒、魔、そんなものが好きなヤツは多いのである。したがって「マイルド酒鬼薔薇聖斗」のブロマガやホームページを拠点にしたコミュニティが早々にできるだろうことは容易に想像できるのである。ネットのなかで語り合いたいことを語っていくのなら、それはそれでけっこうなのである。
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『元少年Aの“Q&少年A”』や『存在の耐えられない透明さ』で「マイルド酒鬼薔薇聖斗」と接触することがすなわち新しい犯罪を生む、フォロワーを育てる、というふうには私は考えないのである。
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もし万一、将来、「マイルド酒鬼薔薇聖斗」のネットコミュニティのなかから犯罪者が出てくるとするなら、秋葉原無差別殺傷事件の加害者、加藤智大(33)のように、ネットコミュニティでの無視や荒らしが直接の動機になると思うのである。この点、「マイルド酒鬼薔薇聖斗」の管理運営能力が問われるのである。
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問題は、こうした「マイルド酒鬼薔薇聖斗」の対外的な行動が、すべて過去の事件を担保にして行われていることである。「元少年A」であることで人は注目しているのである。そして「マイルド酒鬼薔薇聖斗」自身それを利用し、過去の忌まわしい事件を作品のように撫で回しているフシが窺えるのである。
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罪は一生背負っていかなければならないものである。しかし「マイルド酒鬼薔薇聖斗」はこれからの一生を過去の罪に背負わせようとしている感じがあるのである。「マイルド酒鬼薔薇聖斗」が犯した罪はあくまでも、いつまでも過去の1地点に冷たく凍りついてあるのであり、未来への駆動力になど決してならない種類のものである。人が死んでいるのである。
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もし、「マイルド酒鬼薔薇聖斗」が過去の罪を作品として称揚しようとする気配を見せたなら、ネットコミュニティの参加者はそれに敏感に気付き、徹底的に批判しなければならないのである。それができるかどうか。
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さらに「マイルド酒鬼薔薇聖斗」が2つのパスポートを持ち、しかもそのパスポートの住所が、実際に生活を送る拠点と異なっているのではないか、という疑いをかけられていることも書いておかなければならないのである。
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事実であればこれらは「旅券法違反」と「公正証書原本不実記載罪」に該当し、いますぐにでも逮捕されておかしくないのである。このこともよく憶えておかなければならないのである。そのうえで800円の買い物をするのか、よく考えることである。
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芸術と人生について、誰だったかがこのようなことをいっていたのである。《人はそのまま芸術を生きようとする者と、生活に芸術を取り入れようとする者とに別れる》。「マイルド酒鬼薔薇聖斗」は、あきらかに前者である。そして芸術はいともたやすく人の道を踏み外すのである。究極的な集約、また護符として、ここは最もしっかり押さえておかなければならないのである。(了)





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