嵐のファンクラブ会員数は、会員番号などから類推しておよそ150万人、一説には200万人ともいわれているのである。いずれにせよ恐るべき数字である。しかもなかには、ARASHIC(アラシック)またはARASHIANS(アラシアンズ)と呼ばれる熱狂的なファンがいるのである。
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そこで、嵐のファンがなぜ数の上でも熱狂度でも突出しているのか、それを追求しようというのが前々回にお約束していた今回のテーマである。次の4点から考えていこうと思うのである。
[1]裕次郎(享年52)、進次郎(34)、茂次(不詳)
[2]リーダー大野智(34)はいいかげん
[3]詳しくはホームページをご覧ください
[4]仲良し伝説
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[1]裕次郎、進次郎、茂次
次男である、ということである。そのまま「次男」と書くのが嫌でこんなことになってしまったのである。3番目の「茂次」は子どものころ、交番のポスターで見た指名手配犯、荻野目茂次のことである。私は「オギノ・メシゲジ」と読んでいたのである。
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男性アイドルグループ全体を見た場合、といっても結局はジャニーズ事務所内の話に戻ってしまうのだが、長男はキャリア、実績からいって当然、1991年デビューのSMAPである。そして次男が1999年デビューの嵐である。
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ジャニーズ事務所の嵐担当は、ジャニー喜多川の姪である藤島ジュリー景子である。景子にはアイドルとして育てられたわけで、こちらのほうはいささか実際の親子関係に近いのである。そして景子の担当に限ってみても、嵐の上には1994年デビューのTOKIOがいるのである。
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こうして置かれた環境を見れば、アイドルグループである嵐の個性を、人の家庭の次男にたとえて考えもおかしくはないと思えるのである。そこで次男の性格を調べてみると、だいたい「明るい」「開放的」「忍耐力がある」「こだわらない」といったようなことがあがってくるのである。確かに次男は長男よりものびのびしたところがあるように思うのである。
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嵐のデビューは、前に記したように1999年である。9月15日である。「1999年7の月に恐怖の大王が来るだろう」という人騒がせな『ノストラダムスの大予言』が外れた直後である。とはいえ世紀末ということが盛んにいわれ、終末観が幅をきかせていた時代である。そこに明るく開放的な次男が生まれたことは、おそらくアイドルファンの心の底に、あたたかな明るい光を射し入れたと思うのである。
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[2]リーダー大野智はいいかげん
次男である嵐の個性の2つめの特徴は、どこかのんびりしているということである。明るく開放的でのんびりしている、いかにも育ちがよさそうではないか。しかしいいかたを替えれば、自己主張が弱いともいえるのである。嵐というグループ全体でもそうだし、メンバー各自もそうである。オレがオレが、とグイグイ前に出てくる感じがないのである。
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つい最近までリーダーは大野智だというと驚かれたというのも、このためである。ひいてはそれが謙虚だという業界での評判にもつながるのである。しかし陰ではやっているのである。もっと具体的な話をすると、たとえばCD売上100万枚が目標!! と発売前に打ち上げるよりも、結果として100万枚売れました、というニュアンスを嵐からは強く感じるのである。のんびりしているけれども、実績で語るグループ、という印象なのである。
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「のんびり」は、芸能界ではあまり見られない特性である。萩本欽一(74)の弟子であった斎藤清六(67)くらいしか思い浮かばないのである。つまり、芸能人らしからぬ特性である。ふつうに近いのである。このことはファンに大きな安心と親近感を与えているのである。
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嵐は、いささか平凡なルックスも大きく影響して、ひょっとしてなにかの弾みに隣に座っていてもおかしくない、という感じを抱かせるのである。これはとくにJr.時代から見守ってきたファンにはたまらない魅力だろうと思うのである。
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同時に一方では、そんな明るく開放的でのんびりしたアイドルグループは、逆にファンの気質を選ぶ傾向があると思うのである。嵐を物足りないと感じる人は確実にいると思うのである。
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嵐の明るく開放的でのんびりした感じに憧れるのは、極端にいえば、いささかそれとは反対の気質の者たちである。なにか割り切れないもの、屈託を抱えて生きている者たちである。これが嵐への熱狂的な崇拝の土壌にあるのである。
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[3]詳しくはホームページをご覧ください
社会環境に目を転じると、嵐はインターネット、SNSの恩恵を受けた最初のアイドルグループである。インターネットの一般への普及がはじまったのは1995年、Facebookの立ち上げは2004年、Twitterがアメリカで開発されたのは2006年、そしてご承知のようにLINEの開発は2011年である。
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そしてなにより特筆すべきは、スマートフォンの国内利用がはじまったのが、嵐のデビューと同じ1999年であることである。この年、NTTドコモがiモードによってインターネットにサービスインしているのである。
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これら情報端末、SNSの普及は、アイドルファンの行動パターンや心理に劇的な変化をもたらしたのである。それまではテレビ放送を待つだけだったのが、自分からアクセスして情報を得られるようになり、リアルタイム、ピンポイントでアイドルの動向を掴めるようになったのである。しかも情報量の増加は爆発的である。
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アイドルはネット空間でではあるがいつでも会える身近な存在になったのである。これは、実際にはアイドルとコミュニケーションしていないにもかかわらず、直接コミュニケーションしているかのごとく感じるという心理的な錯覚を生むのである。ここにも熱烈なファンへの誘因があるのである。
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いってみれば、嵐はアイドルとファンの高度情報化の先頭を走ってきたグループである。情報端末、SNSの登場、普及と歩調をあわせるようにして成長してきたのである。よくいわれる嵐ファンの情報収集力の高さは、こうした環境とタイミングによって支えられてきたのである。ファナティックな行動に拍車がかかるわけである。
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[4]仲良し伝説
嵐は昔からメンバー同士の仲がよいといわれてきたのである。メンバー同士の仲がよいということは、ファン同士のいさかいの種が、あらかじめひとつ除かれていることなのである。だからこそ、150万人とも200万人ともいわれる膨大なファンクラブ会員がとりあえずひとつにまとまっていられるのである。これにはもちろん、SNSやネットが果たしている役割も大きいのである。
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社会のなかでの数的な優位は、それだけで人をひきつけるのである。圧倒的な数的優位は、そのまま正義とパワーなのである。であるから、まるで「雪だるま式」という言葉の通り、人は増え続けるのである。
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しかし、いかに明るく開放的でのんびりしていて、しかもメンバー同士の仲がよい嵐のファンといえども、古参ファンと新参ファンのあいだにはささやかな葛藤があるらしいのである。ささやかな、というのは、その原因が主にコンサート会場などでのルールやマナーに関するものだからである。そうしたファン同士のいさかいが嵐を傷つけることはほとんどないであろうし、世代間の葛藤はどんな社会につきものである。
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私などは、むしろ世界を嵐と嵐のファンが征服してくれればいいと思うのである。そうすれば世界は平和なものだろうと思うのである。しかし、嵐も嵐のファンものんびりしているので、決してそんなことは考えないのである。それでいいのである。それがほんとうの平和への道である。(了)





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