BABYMETAL、ベビーメタル。SuMETAL、YuiMETAL、MoaMETALの3人のボーカル、スクリーミング&ダンスチームと、神バンドと呼ばれる楽器隊4人からなる、「ベビーメタルバンド」である。
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メタルバンドとだけいってしまっては彼らの彼らたる由縁がはじかれてしまうし、もちろんただのアイドルではない。ファンたちはときどき3姫4神といういい方をするから、すでに本来の意味でのidol(崇拝の対象)とはいえるのだろう。
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3姫のリーダー格であるSuMETALがインタビューでいつも語っているのは「KawaiiとMETALが融合したベビーメタルというジャンルをつくりたい」ということである。というわけで、ここでも「ベビーメタル」を普通名詞扱いしてみたのである。
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ちなみにスクリーミング(Screaming)とは、唄のあいだの叫び、合いの手のことである。また、「BABYMETAL」は元々「HEAVYMETAL」をもじってつけられた名前であるので、「ベイビーメタル」ではなく「ベビーメタル」が公式である。
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とにかく、このBABYMETALが欧米やアジアの各地で人気、というか、たいへんな注目を集めているのである。2014年夏にはイギリスの野外フェスでオープニングアクトにもかかわらず、およそ6万人も動員したのである。このときのようすはBABYMETALのホームページで見ることができるので、ぜひ見ていただきたいのである。
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続く今年、2015年はビルボードのアルバムチャート“World Albums”でトップをマークしているのである。“World Albums”とは、アメリカ国内で発売された海外のアルバムを順位化したチャートである。さらに今年はメキシコ、カナダ、アメリカ、ドイツ、オーストリアなどを回ったワールドツアーも成功させているのである。
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こんなようなことであるので、BABYMETALは国内よりも海外での認知度のほうが高いとさえいわれているのである。国産外タレである。「紅白歌合戦なんかに出演したら格が下がる!!」と、ファンたちは本気になって心配しているのである。
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人気の理由は、まず、やはりすべてのパフォーマンスのクォリティが高いことである。ライヴでのよくコントロールされた、しかも必ず予想を上回ってくるエネルギーには圧倒されるのである。
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それで3姫はいま現在16歳(YuiMETAL、MoaMETAL)と17歳(SuMETAL)なのである。デビューは2010年。つまり11歳と12歳からBABYMETALだったのである。母体は、アミューズのアイドルグループ「さくら学院」の「重音部」である。
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いってみれば3姫はエリートアイドルなのである。そしてさらにそれ以前からの、アイドルとしての環境と徹底的な訓練が、3人にどんな場面においても崩れないプロフェッショナリズムと、ある種洗練されたふるまいを備えさせているのである。これも人気の理由である。
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まあ、そんなことで、たとえば昨年のイギリスの野外フェスでは15歳と16歳であったのである。あたりまえである。あたりまえではあるが、しかし6万人の聴衆を圧倒するその姿に、日本の多くの、しかもどちらかといえばかなり年のいったファンたちも感動して涙したのである。
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あんなに小さな可愛い子たちが世界を相手にわたりあっている、とか、日本のロックがずっと思い描いていた夢を実現してくれた、とか胸が熱くなる思いを、彼女たちのエネルギッシュなパフォーマンスに重ねてしまうのである。一部こういうファンは「父兄」と呼ばれているのである。父兄上等である。
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これからが本題である。BABYMETALってなんだろう? みたいなことを考えてみたいのである。まず、BABYMETALの海外での成功を聞いたとき、いちばん不思議に思ったのは、彼女たち(主にSuMETAL)は日本語で歌っているのに、ということであったのである。
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欧米やアジアの聴衆が、BABYMETALの歌の意味を細かいニュアンスまでとはいわずとも、だいたいのところでも、たぶんわかっているわけはないのである。で、そのうち、ダンス(主にYuiMETAL、MoaMETAL)が翻訳機能を果たしているのだろうという指摘がされて、なるほどと思ったのである。
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しかしさらにそのあと、メタルファンというものはほとんど歌詞などまともに聞いちゃいない、ということもわかったのである。アメリカから帰ってきた友人は、さらに「だいたいはじめっから意味のあることなんか歌ってないじゃない」といい放ったのである。
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メタルはバックの音もぶ厚いし、そこへもってきていわゆるデスボイスでボーボーゴーゴー叫ばれては、確かに意味などよくは聞き取れないであろう。しかし、である。そうすると、あの、20世紀の“日本語のロック”とかの侃々諤々、七転八倒はなんだったのだ? まあ、とりあえずこれで言葉の壁は乗り越えたのである。そうか?
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で、メタルというものは暴力的で男臭いものだったのである。いや、いまでもそうである。振り返れば、無意味に筋肉を鍛え上げた男たちが音楽シーンに現れたのは、1980年代の、このメタルブームがはじめてだったのである。音楽といえばカントリーミュージックでもやさ男、という常識がそのとき覆されたのである。それはそれで面白かったのである。
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が、しかしそれから30年以上、簡単にいってしまえば、メタルは筋肉の音楽でしかなかったのである。だいたいどのバンドを聞いても同じようなことをやっていて進歩がなかったのである。しかし激しい音は暴力衝動や攻撃性を刺激するので、つねに一定の、というか欧米では大きな市場を確保しているわけである。
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またまたそうこうするうち、メタルバンドのメンバーの年齢が全員50代なんてあたりまえになってきたのである。ここに日本から10代の、とても幼く可愛い女の子たちが乗り込んできたのである。この違和感というか異物感は、こちらで想像するよりはるかに強烈なものだったらしいのである。
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日本はなんでも受け容れてしまいやすいので、たとえて置き換えてみるのが難しいのである。ああそうか、日本での話にしなければいいのか。まあ、メタルに佐渡おけさをトッピングとか、そんな感じなのではないのか、と思うのである。
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で、可愛い女の子たちが乗り込んできた瞬間になにごとが起こったかといえば、30年以上も溜め込んだメタルの哲学のようなものとか、主義主張とかが一気に無化されてしまったのである。どうしたのオジサン、どうしていつもそんな怒った顔して怒鳴ってんのー、ってなものである。
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実際、3姫は「はじめてメタルという音楽を聴いたのはデビュー曲のデモテープです」とか「なんじゃこりゃ、って感じでした」と、シレッといってのけてしまうのである。で、Death! Death! Death! と可愛くジャンプしたりもするのである。
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そんな調子で、アイアンメイデンだとかスレイヤーだとか大御所といわれるオジサンたちと笑顔で記念写真におさまったりもするのである。それまではちょっと怖くて誰もがイジりずらかったメタルシーンを、Kawaiiを武器におもちゃ化してしまった、といってもいいのかもしれない。
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微笑みながら笑いながら、ときには少し涙したりしながら楽しめるメタルが、ここに誕生したのである。それがリアルではないというなら、悪魔のぉー、地獄のぉー、と歌い続けるメタルだって決してリアルではないのである。ただし、いい忘れていたがBABYMETALのサウンドはとびきりヘヴィである。
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BABYMETALは、もうほとんど様式化して死に態だったメタルという音楽のジャンルをかき回し、蘇生のチャンスを与えているのである。より全体的な表現への可能性をひとつ提示して見せたのである。あとはメタルというジャンル、そしてBABYMETAL自身が、純粋に音楽としての新機軸を生みだせるか、である。
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BABYMETALのテーゼは「ベビーメタルというジャンルをつくる」と、もうひとつ「メタルで世界をひとつにする」である。もちろんBABYMETALはアミューズという音楽企業がつくった商業的な発明品である。「メタルで世界をひとつにする」は、一種のジョーク、お約束の、いわばムーブメントオチである。
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とはいえ、BABYMETALには、なにか世界をつなぐヒントが隠れているような気がするのである。Kawaiiだろうか? もちろん。高度に洗練された技術だろうか? もちろん。ハードワークだろうか? もちろん。そしてそれらにプラスして、きっと直接ハートに語りかけるなにかだと思うのである。理屈ではなく。またただの情緒でもなく。
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それを言葉にしてみるのはやさしいのである。しかしそれではたぶんダメなのである。いま求められているのは、誰もがいままでに見たことも聞いたこともない表現でそれを示すことなのである。BABYMETALに輪をかけて突拍子もなく、ある日突然。(了)


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