11月26日、『第66回NHK紅白歌合戦』の出場歌手が発表された。全51組。これに「特別企画」として小林幸子(61)が“出演”するのである。で、全体の印象としてなーんか散らかっているのである。いちおう一覧を掲出しておく。
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【紅組】
E-girls、いきものがかり、石川さゆり、今井美樹、AKB48、NMB48、大原櫻子(初出場)、伍代夏子、坂本冬美、椎名林檎、Superfly(初出場)、島津亜矢、高橋真理子、AAA 、天童よしみ、西野カナ、乃木坂46(初出場)、Perfume、藤あや子、松田聖子、水森かおり、μ's(初出場)、miwa、レベッカ(初出場)、和田アキ子
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[特別企画] 小林幸子
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【白組】
嵐、五木ひろし、EXILE、X JAPAN、関ジャニ∞、ゲスの極み乙女。(初出場)、郷ひろみ、近藤真彦、ゴールデンボンバー、三代目J Soul Brothers、SMAP、SEKAI NO OWARI、SEXY ZONE 、TOKIO、徳永英明、BUMP OF CHICKEN(初出場)、氷川きよし、V6 、福山雅治、星野源(初出場)、細川たかし、森進一、三山ひろし(初出場)、美輪明宏、山内惠介(初出場)、ゆず
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[初出場] ゲスの極み乙女、BUMP OF CHICKEN、星野源、三山ひろし、山内惠介、大原櫻子、Superfly、乃木坂46、μ's、レベッカ
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紅白出場歌手のリストをこの前しげしげと眺めたのは、そうさなあ、あれはたぶん10年以上もむかしのことである。そのときもなんだかつまらなそうには思ったのだが、今回は困惑してしまうのである。
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なにに困惑するのかといえば、あまりの魅力のなさである。個々の出場者しかり、全体のバランスしかり。企画・構成がまだわからないのだが、それでも「みんなで楽しく歌でも聴きながら1年を締めくくりましょう」ですらないような気がするのである。この盛りさがり感、尋常ではないのである。謎である。
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いつもいつも例に出して申しわけないが、和田アキ子(65)である。なぜいまさらアキ子なのか? なにしろ新曲CDはいつも1000枚程度しか売れず、女性に嫌われる女性ランキングではダントツのトップを独走し続けているのである。
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今回アキ子が選ばれたのは、実はバーターだという噂まで出ているのである。紅組の司会を担当する同じホリプロの綾瀬はるかとである。そんなことが許されるのか、と怒っても許されるのである。なんだかたくさんいる、演歌系の人たちやジャニーズも許されるのである。
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出場者の選出は、(1)今年の活躍実績、(2)NHK調査による世論の支持、(3)演出・企画の要素、の3点を総合的に判断して行う、とされているのである。(3)演出・企画の要素、を持ち出せば、(1)(2)がどうであれ、NHKの都合のいいように決められるのである。
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落選したももいろクローバーZの場合を見てみよう。今年発表したシングル3作はいずれもオリコンチャート4位以内にランクインしている。夏に静岡エコパスタジアムで行った公演は2日間では9万人以上を動員しているのである。さらに来年2月からのドームツアーでは35万人超の動員を見込んでいるのである。これまでの紅白への貢献度も高いらしいのである。
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つまり、いまさらいうまでもないが、出演者のラインアップがすべて一流、第一人者とは限らないし、人気の絶頂であるとも限らないのである。紅白を見れば今年1年の歌がだいたい聴ける、とはいえなくなっているのである。こうした選考の不透明さもまた、視聴者離れの原因である。
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で、紅白の発表があったのと同じ26日、ももいろクローバーZは、公式ホームページ上に紅白からの卒業宣言を公開しているのである。「私たちは私たちのやり方で、みなさんと一緒に『私たちの道』を歩き続けます。ど真ん中しか歩きません」なのである。紅白は脇なのである。はっきり怒っているのである。こうして歌手たちのあいだにも紅白離れはすすんでいくわけである。
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で、全体のバランスである。特別企画の小林幸子である。幸子といえばここ数年、コミケに出展したりポケットモンスターの主題歌を歌ったり、ラスボス(ゲームのラストに残ったボス)だったり、VOCALOID「Sachico」を発売したりと、サブカルやネットに活路を見出してきたのである。
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幸子の起用はそうした、たとえばニコニコ動画とのコラボレーションなどを視野に入れてのものだと思われるのである。きっとNHKはこれで若い層にも新しさをアピールできる、シメシメと踏んだのである。
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しかし、ここに登場するのがまたアキ子なわけである。紅白歌合戦に頑固にこびりついた汚れである。酷いいいようだが、ネットでの嫌われかたはもっと酷いのである。つい最近も『アッコにおまかせ!』(TBS)がBPO勧告を受けた際の他人事対応で激しい批判が上がっているのである。
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アキ子はネットでははっきり嫌われ者である。せっかく幸子を起用して新味を出しても、これではあまりにもチグハグである。たとえば好物の料理で誘っておきながら大嫌いなニンニクを盛大に効かせてゲンナリさせるようなものである。
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NHKとしては、いろいろなファンの皆さまのご期待に幅広くお応えしたい、とかなんとかいうのであろう。しかしそれはただの八方美人というものである。その証拠に出場者のリストからは、ここをカバーするなんの工夫も窺えないのである。
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『第66回NHK紅白歌合戦』のテーマには、さらに困惑させられるのである。「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」なのである。思わず顔を見合わせるのである。誰もいないのだが。ザッツ? 言葉を失うのである。誰がいってんの? 以下、テーマを説明するボディコピーらしきものである。
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これぞ、日本! これぞ、紅白! 今年は、 紅白がもっとも紅白らしく輝く、 いわば紅白の決定版! 出場歌手も、 自分たちらしさでいっぱいの 「ザッツ(=これぞ)」なステージを届けます。 歌も、驚きも、笑顔も、感動も、涙も、夢も、 エンターテインメントのすべてが、ここにある。
戦後70年、日本の心が、ここにある。
ザッツ、日本! ザッツ、紅白!
12月31日、いよいよ開幕です!
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いったいどーしたらこんなにバカになれるのであろう? 謎である。真面目に読むとクラクラする。「紅白の決定版!」「エンターテインメントのすべてが、ここにある。」「戦後70年、日本の心が、ここにある。」……。中身のない勢いだけの言葉を思いつきで並べてみた感が筒抜けである。
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昨年の紅白歌合戦の平均視聴率は1部が35.1%、2部が42.2%であり、昭和の1部構成の時代には70%超えがめずらしくなかった、という事実がアタマに入っていないのであろうか? 「紅白の決定版!」というフレーズは、いったいどこから出てくるのであろうか?
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もう、これでは、なんだか散らかっているどころではないのである。「戦後70年、日本の心が、……」ではなく、「戦後70年、日本の残骸が、ここにある。」といいたくなるのである。
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ああ、とやっといま気がついたのである。きっとNHKはもうやる気がないのである。やればやったで視聴者からは文句をいわれ、歌手たちからは頼むから出演させてくれとあの手この手でねじ込まれ、やっと終わったと思ったらまた視聴率が下がったとかなんとか酷評されるのである。
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きっとNHKは、もう紅白歌合戦なんか止めてしまいたいのである。止めても誰も文句はいわないかもしれないのである。そう、つくるほうも観るほうも、ほんとうのことをいえば、たぶんただただ惰性で毎年付き合っているだけなのである。止める勇気すらなく、なりゆきでお互いを苦しめあっているだけなのである。
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紅白なんかなくたって、少なくとも私はぜんぜん困らないし寂しくもないのである。というか、正月なんかもなくていいのである。戦後70年、私もなんだか日本の残骸みたいな気分である。ザッツ、日本! 。これぞ日本!である。(了)


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