『SMAP×SMAP』(「フジテレビ」1月18日放送)での生謝罪会見から2週間が経とうとしています。もちろん、まだとうぶん「SMAP」からは目が離せそうにありません。しかしその一方で、ほかのジャニーズ事務所の所属タレントたちにも、それぞれなにがしかの影響があるはずです。とくに「嵐」の今後はいささか難しくなりそうな気配です。そこを整理してみます。
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「嵐」が難しくなるというのは、まずは、これまで以上に「SMAP」と較べられる場面が多くなるということです。もちろん「SMAP」ももともとジャニーズ事務所の所属タレントですし、同じ人気アイドルグループ同士、これまでにもなにかにつけ比較されてきました。しかしこれからは状況が違います。
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「SMAP」のチーフマネージャーであった飯島三智(58)の在職中、つまり「SMAP」解散騒動の前までは、「SMAP」の扱いはほかの所属タレントたちとは別でした。飯島マネージャーは「SMAP」を育て上げ、同時にジャニーズ事務所内における「スマップ」部局とでもいうべき独特の、しかも独立性の高いポジションを確保していたのです。
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飯島マネージャー自身、およそ30年間にわたって一度の異動もなく「SMAP」を担当し続けていました。これは一般企業でも、もちろんジャニーズ事務所でもたいへん異例のことです。
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人事が固定すると、とうぜん人的交流の機会が失われ、仕事のやり方もバラバラになり、やがて「SMAP」と飯島三智たちは、ジャニーズ事務所内の一部局からさらに、「SMAP」事務所、といった存在になっていきました。会社内会社です。
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これまで「SMAP」は、「嵐」からすると身内ではあっても他人のような存在で、そういつもいつも強く意識しなければならない相手ではなかったのです。しかし飯島三智が退職したこれからは、“「SMAP」事務所”は解体され、皆と一緒のフロアで、皆と一緒に仕事をする、という感覚になっていきます。極端な話をすればいま現在の「嵐」のマネージャーが、来年は「SMAP」のマネージャーになっている、ということもありうるわけです。
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同じ場所に立って同じ条件で仕事をするわけですから、「嵐」と「SMAP」が厳しく較べられるようになるのは、あたりまえの話です。そういう緊張感のある状況は、おそらくそんなに長くは続かないかもしれません。それぞれの立ち位置というものは、割と素早く自然に決まっていくものです。しかし厳しい比較対照は、一度は絶対に通らなければならない道です。しかもデンジャラスです。
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で、較べられて不利なのは「嵐」に決まっています。「SMAP」はいまの、バラエティや司会でも活躍できる男性アイドルグループという方向性を開拓したオリジネイターなのです。「SMAP」以降の男性アイドルグループはことごとく、多かれ少なかれ「SMAP」の影響の元にあります。エピゴーネン、二番煎じであることから逃れられないのです。
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さらに「嵐」が不幸であったのは、ジャニーズ事務所内には飯島派、ジュリー派、ジャニー派という3つの派閥があり、それぞれ覇を競っていたことです。ま、ジャニー派はマイペースみたいですが。ですから実際には、飯島派V.S.ジュリー派+ジャニー派連合ですね。「嵐」はご承知の通り、藤島ジュリー景子(49)が率いるジュリー派です。
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さて、それぞれの所属を並べてみましょう。
■飯島三智派 :SMAP・山下智久・Kis-My-Ft-2・Sexy Zone ・A.B.C-Z
■藤島ジュリー景子派:TOKIO・嵐・関ジャニ∞・NEWS・KATーTUN ・Hey! Say! JUMP
■ジャニー喜多川派 :V6・KinKiKids・タッキー&翼
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藤島ジュリー景子派のラインナップから明らかに読み取れるのは「SMAP」への対抗心です。1990年デビューの「TOKIO」はバンドですからちょっと横へおいておくとして、「嵐」、「関ジャニ∞」、「NEWS」、「KATーTUN 」、「Hey! Say! JUMP」と続くあたりは、明らかに、“第2のSMAP”を意識しています。えっと、のんびりしてて自由なオジサン、ジャニー喜多川(84)は、やっぱり対抗心とは関係のないところで生きていますね。
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繰り返しになりますが、「SMAP」以降の男性アイドルグループが「SMAP」の二番煎じになるのは、どうにもならない宿命なのです。意識するしないにかかわらず、「SMAP」の歩んだ道を追いかける、ということです。
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そしてやはりオリジネイターの神通力というものは実に凄まじく、「嵐」にしても「SMAP」に肩を並べる存在になるにはずいぶん時間がかかりました。その間にいくつものグループがデビューして、いまやジャニーズ事務所のなかだけで10を数えます。
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男性アイドルグループは、すでに飽和状態にあります。これはジャニーズ事務所が企業としてすでに成長期を過ぎていることを意味しています。「嵐」の試練の時期がまもなくくるはずです。これはまた、別の機会にまとめます。
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で、ここに 飯島三智に対する藤島ジュリー景子、というかジャニーズ事務所の対抗心、さらにいえば敵愾心が働いて、もう1組の「SMAP」をつくろう、という密かな野望が沸き起こるわけです。飯島&SMAPの勝手を許さないために、私たちの派閥にも「SMAP」を、というわけです。
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逆にいえば、どれほど「SMAP」に似ていようと、たとえクローンであろうと、「SMAP」に対抗し、追い落とすことができれば賞賛されるという状況があったわけです。そうしたなか、「SMAP」に遅れること約10年、1999年に誕生したのが「嵐」です。
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で、さらにさらに悲しいことは、藤島ジュリー景子のプロデュース能力の限界です。ジュリーは「SMAP」のクローンを超えるビジョンも戦略ももちあわせていません。もちあわせていませんでしたし、期待されてもいませんでした。とりあえず、もうひとつの「SMAP」をつくればよいのですから。
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したがってこれまで「嵐」はひたすら、なんだかむかし「SMAP」で見たような気が……、という仕事をこなしてきました。しかしこれからは実物の「SMAP」が目の前の“同じ事務所”にいるわけですから、やりにくくなります。「嵐」としての独自のカラーをどうやって打ち出していくか、これからが勝負どころです。
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しかも、これはなにも事務所内部だけの話ではなくて、ファンや一般視聴者も、「嵐」と「SMAP」を並べて見るようになります。“いや、人が違っているのは、そりゃ見たらわかるけど、やってることのなにが違うの?”というわけです。そのときにはっきりとした違いを見せられなければ、それは「嵐」の負けです。どちらが先にそれをやったのか、とは関係なく。
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一方、「SMAP」は今後、急ピッチでアイドルからの脱皮をめざしていくでしょう。ですからアイドルとしての「SMAP」の印象が薄くなってしまう前に、「SMAP」とはまた異なる新機軸を打ち出すことが「嵐」には求められます。「SMAP」を超えた「嵐」です。そうしなければ、「嵐」はいつまでも「SMAP」のクローン、あるいは二番煎じという立場で、後塵を拝し続けることになります。
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とはいえ、なんだかんだいってもアイドルなのです。格好よくて有無をいわさず夢中にさせる魅力があれば、それですべてはオーケーという側面もあります。「嵐」のメンバーの平均年齢33.2歳。「SMAP」は41.4歳。「嵐」にはまだアイドルとしてののびしろがあります。そういう、いっそうの魅力を彼ら自らが発掘できるか、楽しみにしたいものです。(了)

