2016年3月23日水曜日

日本人はもっとBABYMETALに注目。クールジャパンが吹っ飛ぶ!!





BABYMETAL。一般には「Kawaii(アイドル)とMETALを融合した新しいジャンルの確立をめざすメタルダンスユニット」と固く紹介されることが多いようです。たぶんデビュー当時のプレスリリースにはこうあったのでしょう。それにしても、この“メタルダンスユニット”という表現はいかにも仮づけです。



実際のところBABYMETALにはダンスばかりではなくてボーカルもあり、それぞれ強力です。それに“Kawaii”という言葉の意味も、そしてそれに見合うご本人たちのアピアランスも浸透してきているので、もう「カワイイメタルユニット」くらいのいいかたでいいのではないでしょうか。



メンバーはSU-METAL(18歳。ボーカル、ダンス)、YUIMETAL(16歳。スクリーム、ダンス)、MOAMETAL(16歳。スクリーム、ダンス)の3人です。まあ、若い。若いですけれども、海外ではすでに日本人としては前人未到の成功を収めています。というか、これまではほとんど手も足も出せませんでしたから。



BABYMETALの3人に加えて、ライブでは4人編成のサポートバンドが参加します。「恐ろしいほど上手い」(2014年11月4日のニューヨーク公演に関する『ビルボード』のレビュー)ので“神バンド”と呼ばれ、カワイイメタルユニットの3人とあわせて、敬意を込めて“3姫4神”と呼ばれたりします。



ついでにこのニューヨーク公演の『ビルボード』と『ガーディアン』のレビューから、ポイントをまとめた記事があったのでご紹介しておきます。(「Newsphere」2014年11月8日)

・音楽から熱意と知性を感じる
・ヘビメタには付きものの、周囲の客の中に飛び込むモッシングは少なかった

・振りつけは超簡単で楽しく、皆が盛り上がった
・バックバンドは恐ろしいほど上手い
・ステージジョークなどはない。ファンに「Singing!」と英語で呼びかけていた。最後には、かわいらしく「すごく楽しかった、ありがとう。またね」とメンバーからの挨拶があった



BABYMETAL は日本語で歌っているので、歌詞の内容や世界観についての言及はありません。『ビルボード』はまた、公演は満員であり、母親に手を引かれた小学生から、中年、長髪で髭面、タトゥーだらけの典型的メタル・ファンまで、多様なファンが集ったと報告しています。



 

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ここでBABYMETAL の活動歴をざっくりまとめておきます。
●1997年12月20日 :SU-METAL誕生
●1999年6月20日 :YUIMETAL誕生
●1999年7月4日:MOAMETAL誕生
●2010年11月:中学生までの期間限定アイドルグループ「さくら学院」内のクラブ活動ユニットのうちの1つである「重音部」として結成
●2011年10月:DVDシングル「ド・キ・ド・キ☆モーニング」でインディーズデビュー
●2012年8月:「サマーソニック 2012」2日目の東京会場にサマーソニック史上最年少で出演
10月:神バンドが初参加。それまではカラオケ
11月:「アニメ・フェスティバル・アジア シンガポール 2012」に出演
●2013年1月:シングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でメジャーデビュー
この年、「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2013」、「JOIN ALIVE 2013」、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」、「イナズマロックフェス 2013」、「LOUD PARK 13」など複数の野外フェスティバルに出演
12月:日本国外では初となる単独公演をシンガポールにて開催
●2014年2月:1stアルバム「BABYMETAL」発表。iTunes Storeロックアルバムチャートで7ヵ国のベスト10入り。この年のビルボード・ワールド・アルバム・チャートでは1位を獲得
3月:日本武道館ワンマンライブ2デイズを行い女性アーティスト史上最年少記録を樹立
夏から初のワールドツアーへ
7月:イギリスの大型フェス「Sonisphere Festival UK」ではメインステージに登場し6万5千人の観衆を集める
レディー・ガガの北米ツアー5公演のサポートアクトに抜擢される
●2015年1月:さいたまスーパーアリーナでワンマンライブを開催。2万人を動員
5月:北米、中南米、ヨーロッパなど10カ国、15公演となる「BABYMETAL WORLD TOUR 2015」をスタート
6月:凱旋公演となるワンマンライブを幕張メッセ展示ホールで開催。2万5千人を動員
イギリスの音楽誌「KERRANG!」と「METAL HAMMER」が主催する2つのミュージックアワードに出席し、日本人アーティスト初となるアワードを受賞
8月:イギリスの世界的ロックフェス「Reading & Leeds Festival」のメインステージに出演
12月:横浜アリーナワンマンライブ2DAYSを開催
●2016年4月(予):2ndアルバム「METAL RESISTANCE」発表
イギリス・ウェンブリーアリーナにて海外公演では初めてとなるアリーナワンマンライブ開催
ワールドツアーののち、東京ドームでのワンマンライブを予定



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ローティーンから大活躍のBABYMETAL です。めまぐるしい急成長、めざましい活躍ですからどのトピックも注目されるのですが、わけても特筆すべきは2014年7月 の「Sonisphere Festival UK」出演でしょう。ここでおさめた成功はいまや“伝説”であり、子々孫々、永く後世にまで語り継がれるであろう空前の快挙でした。



激しいロック系の表現は大げさですねー。なんといってもアルバムタイトルにしても「地獄の咆哮」だの「血まみれの安息日」だの「狂熱のライヴ」だのばっかりだったのですから。そこのところ、ご理解ください。



しかし正味の話、当時15歳と16歳の3人の女の子がとくに臆したようすも見せず約6万5000人もの聴衆の前に立ち、堂々とパフォーマンスを繰り広げ圧倒したシーンは、ほんとうに鳥肌ものでした。日本アイドルの底力みたいなものまで感じました。



日本のバンド、というか日本人にあんなことができるとは、そのときまでおそらく誰も考えていなかったのです。とくに長いあいだロックを聴いてきたオジサンオバサンたちには、思わず胸と目頭が熱くなるのを禁じ得ないほどの大感激でした。



で、この2014年の「Sonisphere Festival UK」とはじめてのワールドツアーによって、BABYMETALはロックバンドとして世界的に認知されたわけです。たとえば、次のような感想がそれを物語っています。

・「口パクだろうと思っていたのに、実際に歌っていたので、本当にびっくりした」(「METALSUCKS 2014年7月)
・彼女たちがライブするところを実際に見た人に聞いてみなよ。このバンドはすごいよ。信じないって? 自分で行って確かめてごらん(「LAタイムズ」2014年7月)



 

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その一方では、「こんなのはMETALではないっ!!」という批判の声も上がっています。いわゆるメタルエリートなどと呼ばれるコアなファンには、「カワイイメタルユニット」は、どうも許し難い存在のようです。今回はこの問題をざっくり考えつつ、ついでにBABYMETALの魅力をチェックしてみましょう。



まあ、あれです。いきなり身も蓋もない話ですが、ジャンルの正統性にこだわるというのはあまり意味のないことではないでしょうか? たとえば「これは大福餅ではない!!」といったところで「いちご大福」は売れに売れて、いまやほとんどの和菓子店の定番アイテムです。



さらに俳句のなかには五七五の定型俳句もあれば、定型に縛られない自由律俳句もあります。ジャンルなどというのは、これは大福だ、俳句だ、といえば大福、俳句ですが、いや違うよといえば違うという、そんなようなものです。



それなら「大福」「俳句」「メタル」という言葉は使わないでくれ、勝手にどこかよそでやってくれ、という意見がとうぜん出てきます。しかし、「いちご大福」の発案者としては、「いちご大福」は大福餅の進化形、あるいはバリエーションだと思っているわけです。これも立派な「大福餅」だ、と。



それだけではありません。「いちご大福」「自由律俳句」「カワイイメタル」は、それ自体がおのおののジャンルへの批評でもあるのです。つまり「いっつもいっつも真っ黒くろで甘い餡ばっかりじゃ面白くねーよ」、「五七五じゃいえねーこともあるよ」、「いっつもいっつもムッサイオヤジがゴーゴー叫んでいるだけじゃつまんねーよ」ですね。



そこで、「大福餅の餡のなかにイチゴが入っていたっていいじゃないか!!」、「五七一五でもいいじゃないか!!」、「メタルのなかに15がいてもいいじゃないか!!」と。ですから、それぞれ大福、俳句、メタルは外せないわけです。先祖の名前を引き継ぎつつ、また新たな品種ができるのです。



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で、なかでも「カワイイメタル」はその批評としての働きがあまりにも鮮やかだったために、メタルエリートたちはあっけにとられてしまったのです。METALは、内容、世界観としてはもっぱら怒りや悲しみ担当です。あとオカルト。で、筋肉隆々の男たちが長髪振り乱し、ぐぐっとシリアスなひげヅラに青筋立てて「KILL!! KILL!!」などとがなりたてます。



そこへ突然、カワイイメタルがやってきて「わたしたち、ベビーメタルDEATH!!」 と、カワイイポーズを決めてしまったのです。その瞬間、METALは一気に相対化されてしまいました。METALのMELTDOWN。これは痛快でした。「やだドキドキとまんなーい!」(「Catch me if you can」)、って感じです。



ステージ上でそれはよりはっきりして、いままでのMETALは見ていてなんと退屈でつまらなかったのだろう、と後悔します。暗くて汚くてタイマツが燃えたりして。ひとむかし前に、METALは伝統芸術、様式美と茶化されたことがありましたが、本質的にはあれからなにも変わっていないのです。



BABYMETALのポジティブなエネルギー感も、これまでのMETALのライブにはなかったものです。しかも3人とも、とびきりの眼福、アイキャンディです。METALのライブで「面白かった!!」という感想が聞けることはほとんどありませんでしたが、BABYMETALのライブの感想で多いのは「最高すぎた!!」「スゴすぎた!!」そして「面白かった!!」の3つです。



結局、EDM(Electronic Dance Music)でも痛感しますが、ほとんど誰でも重低音の速いリズムは好きなのです。そしてギターのギューン!! も。これらはいってみれば大福餅の、餅の部分です。で、期待して食いついていくと、いつまでたっても単調なリフに乗せて十年一日のごとくデスヴォイスがゴーゴーなわけです。その、真っ黒くろでお腹にもたれる甘い餡。そちらのほうがもう少しなんとかなりませんか、です。



 

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さて、BABYMETALへのもうひとつの批判は、商業主義的ではないのか? 、そしてこれに付随してMETALへのロイヤリティというか、いわゆるメタル愛があるのか? ということです。具体的な発言を見てみましょう。「Newsphere」2014年11月の記事です。

《音楽ファンのサイト「Noisey」で、ヘビーメタルに詳しいキム・ケリー氏は、「BABYMETAL」がメタルの名を語ることは大問題だ、と憤る。同氏は、「BABYMETAL」は作られたポップ・アイドル・グループで、プロデューサーが新しいガールズ・バンドのテーマとして「メタル」に決めただけだと批判。楽器も弾けず、グループ結成までヘビメタを聞いたことがなかった彼女らの存在は、「サブカルチャーと、多くの人が真面目に愛する音楽に対する侮辱である」と手厳しい。》



おっしゃる通りです。事実関係にかんするキム・ケリーの指摘はすべて正しいですね。 BABYMETALは、アミューズのプロデューサーKOBAMETALが「Perfume」を成功させたあと、“アイドルとテクノを合体させたから、次はアイドルとメタルの合体しかない!!”とお調子に乗って考えたところから生まれました。



要するに2匹目のドジョウ、なりゆきの産物です。まあ、“アイドルとメタルの合体”などとというのは欧米の感覚でいえばそうとう調子っぱずれ、というかネジが緩んでいるような感じらしいですけれど。だいたいキリスト教徒でもないのにクリスマスだ、ハロウィーンだで浮かれたりしていますから、日本なんてそんなものですよ。



つまり、音やビジュアルは接すればわかりますけれども、しかしその奥にあるはずの正体がいまいち不明という感じなのでしょう。なので、ほんとうにBABYMETALを理解しようとするには、これはマジメに日本のアイドル文化を理解しないとわからない面があります。そしてそこでいちばん大切なのは、BABYMETALではアイドルがMETALをやっているのであって、METAL系ミュージシャンがアイドルをやっているわけではないということです。



YUIMETALがどこかで「私たちはダンスを任されているので」という発言をしていました。このいい方がアイドルですね。アイドルにとって、ミッションは自分のなかからではなくて、外からやってくるものなのです。「狐の神さま=KOBAMETAL」のお告げによって動く、というギミックがこれに対応していて、よくできているなあ、と思います。



またYUIMETALは同じインタビューで「 狐の神さまってなに?」という質問に短く「プロデューサー」と答えています。この元も子もないところが現代のアイドルらしくてナイスです。



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アイドルというものは、成長の過程をファンと共有していきます。“グループ結成までヘビメタを聞いたことがなかった彼女ら”というのは、ですから、その意味でアイドルの王道をいく存在であるわけです。そしてその前に「さくら学院」という名門グループで育ったエリートアイドルでもあります。



BABYMETALのプロ意識の高さや、たとえばフォトジェニックな動き、礼儀正しさなどの高度な洗練は、そうした子どものときからのアイドルとしての訓練で育まれたものです。BABYMETALのどの瞬間を切り取っても絵になる可愛らしさというのは、おそらくはそれにさらに天性の資質が加わってはじめて可能になるものでしょう。



とくにMOAMETAL(菊地最愛)ですね。あざといくらいのカメラ目線、表情の変化で多くの尊敬を集めて“菊地プロ”と呼ばれています。で、年上のロックファン、メタルファンたちはほほえましい気持ちでそんな彼女たちの成長を見守り、感情移入をし、最終的に忠誠を誓うわけです。



いささか話はそれますが、2ndアルバムに収められる予定の「KARATE」という曲の、たいへんスパルタンなイメージのMVのなかでも、MOAMETALがアイドルっぽい笑顔を見せるシーンがあります。いささか場違いといえば場違いなのですが、あの笑顔がBABYMETALをただのMETALゴッコになることから救っているのです。



で、最初に戻って。これからヘビーメタルをやるといわれたとき、MOAMETALは「はじめてヘビメタというものを聴いて、やっぱり怖かったです」といい、SU-METALは「なんじゃこりゃ!! と最初は思ったんですけど、そのうちドラムがドンドン鳴ったりして楽しそうだな、と思えるようになりました」で、YUIMETALにいたっては「なにがなんだかわからないままやってるって感じで……」なのです。



あまりにあっけらかんとしていて取りつく島がありません。これがアイドルが先、METALは後、のBABYMETALなわけです。とはいえこうした事情で誕生した からといって、BABYMETALの評価は、「サブカルチャーと、多くの人が真面目に愛する音楽に対する侮辱である」ところにはたどり着きません。



まずはケリー、ちゃんと1stアルバム「BABYMETAL」を聴いてほしかったですね。あのアルバムは「サブカルチャーと、多くの人が真面目に愛する音楽に対する」尊敬にあふれています。しかも、思わずクスっと笑ってしまうようなやりかたで。よく聴いてください。



 

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そしてBABYMETALには、実際にライブを見た人たちが呆気にとられてしまうほどの素晴らしいスキルがあります。SU-METALのボーカルは圧倒的で、心をどこかへ吹き飛ばしてしまうほどの説得力です。おおげさでなく。




2014年のニューヨーク公演のレビューでは「振りつけは超簡単で楽しく、皆が盛り上がった」とお気楽に書かれたダンス。しかしあの振り付けをあそこまで正確に踊り抜くのは、ほとんど超人的です。これらもまた長い、厳しい訓練の上に獲得されたもので、“楽器も弾けず”ということと引き替えにしても十分におつりがくるはずです。



実際のところ、彼女たちがほんとうにMETALが好きなのか? についてはわかりません。そういえばYUIMETALはあるインタビューでアリアナ・グランデが好きだと発言していました。あとSLAYERのギタリスト、ケリー・キングのスキンヘッドによるヘッドバンギングに感銘を受けたそうです。



では彼女たちは何をめざしているのか? といえば、可愛いこと、人気があること、称賛されること、それからお金でしょう。そのための手段としてBABYMETALという大きなチームの一員として全力を尽くしています。



“商業主義”については、まあ古い言葉ですからねー。ともかくいいたいことのひとつは、動機が不純じゃないの? という疑いでしょうね。これは結局のところ、ことをはじめるにあたって、こうやれば儲かるんじゃね? と、考えたか、こうやったらウケるんじゃね? と考えたか、どちらほうの比重が大きかったか、という問題です。みんなコマーシャルベースで活動しているわけですから。



こうやれば儲かるんじゃね? の思惑のほうがずいぶん大きければCDに握手券や総選挙投票券を封入する、なんてバカなことになります。商業主義というか儲け主義は、ことほどさようにその後の展開を見ていればいやでもわかります。いまのところBABYMETALはそれほどガツガツしていないように見えます。



“商業主義”という言葉に込められたもうひとつの疑いは、作品やブランド、この場合はBABYMETALの3人は商品でしかないので、中身が薄く、質が悪く、プライドのないものになっていないか? だと思います。



それが杞憂だということは、ただBABYMETALのCDを聴き、ライブを観ればわかります。BABYMETALは、メタルバンド、メタルパフォーマンスグループとして、間違いなく世界トップクラスです。で、キム・ケリーが好むと好まないとに関わらずそこに存在し続け、METALの宇宙をより豊かに広く開拓していきます。



今年(2016)、BABYMETALは4月2日にイギリスのウェンブリー・アリーナでのワンマン、そしてワールドツアー、東京ドームでのワンマンを経て、また1ケタか2ケタ、スケールアップすることでしょう。このぶんでいくと、あと1、2年で国民栄誉賞ものです。



ウソだとお思いの方は4月4日午前0時6分からのNHK総合「MJ presents BABYMETALスペシャル(仮)」をご覧ください。「Before BABYMETAL(BB)」から「Anno BABYMETAL's (AB)」へ、あなたの時代が変わります。なんだか宣伝臭フンプンですが、1円も戴いておりません。タダ働き。お疲れさまでした。(了)




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