2016年3月17日木曜日
ジャニー喜多川の性癖が生んだ「卒業」なしの地獄
昨日は、メリー“ザ・フィスト!”喜多川以降の男性アイドルについて、少し考えてみようとしました。で、書いていくうち、男性アイドルというのはたいへん特殊なものなのだなあ、と改めてつくづく感じたわけです。間抜けな話です。で、今日はそれを書きたいと思います。ほんとうはこちらを先に書くべきでしたのに、順番が逆になってしまって申しわけありません。
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もしあなたがジャニーズタレントのファンだとしたら、少し気に障ることを書くかもしれません。あらかじめお詫びしておきます。冒頭からお詫びばかりです。ビビっております。なにしろアイドル(idol=崇拝の対象)+ファン(fanatic=狂信者の略)なのです。いつ「冒涜だ!!」とねじこまれ、いえ抗議されるかもわかりません。
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“嵐のウチワに向かって土下座なんてむかしのこと”と、いわれても、去年の12月25日にも『Mステスーパーライブ2015』(テレビ朝日)でARASHICのみなさん、おやらかしになっております。二宮和也(32)の腕にタッチしたファンのツイッターアカウントを即座に特定し、猛烈な罵詈雑言をお浴びせになられました。ARASHICの行動力、組織力は、気の弱い小市民をたじろがせるには十分です。
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で、当然の疑問は、どうしてそこまでやるのか? または、やるようになるのか? です。アイドルは崇拝の対象なんだからあたりまえじゃん!! という声と同時に、思春期の女子に特有の世の中やオトナに対する強いフラストレーションが……、みたいな、もうアッキアキの言説も聞こえてくるようです。そんなもん面白いからだよねー、という元も子もないようなご意見も。
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いえ、ですからもう少しマシな説明はできないか、と思うわけです。おお、つい大きく出てしまいました。そこで、また例によってWikipediaによりますと、《日本の芸能界における「アイドル」とは、成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物を指す。》となっています。「存在そのものの魅力で」というのは、別に芸能のスキルなどそれほど気にしなくてもいいということですね。
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では、学校の「アイドル」と日本の芸能界における「アイドル」との違いはなんでしょう? Wikipediaの説明に従いますと、それはただ「成長過程をファンと共有」するということになります。まあ、顔面偏差値が高いとかの物件的クォリティの差は厳然としてありますけれども。
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この「成長過程をファンと共有」するという、いかにもジャニーズ的な特性の指摘は、たいへん的を射ていて、かつ重要なものです。しかし、これだけではないとも思います。思うに、アイドルというものは、空想や妄想を許す曖昧さを備えていることも欠かせない要素のはずです。
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もしデートをしたら、勉強を教えてもらったら、クラブの先輩だったら……、みたいな空想をはばたかせる余地、イメージの余白がアイドルには必要です。これは「成長過程をファンと共有」することとも重なりあっています。
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昨日の記事で、ジャニーズ事務所の、所属タレントに対する細かな禁止条項をご紹介しました。『「嵐、ブレイク前夜」外伝 嵐、青春プレーバック』(主婦と生活社)からの抜粋です。そこでは8項目上げられていました。なかで気になったのは「具体的なペットの話」がNGであることです。かなり香ばしい感じ、と書いておきました。
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なぜ「具体的なペットの話」がNGなのでしょう? ジャニーズ事務所の説明では「ペットが特定されて事件などに巻き込まれる怖れがあるから」だったそうです。ウソですね。
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ジャニーズ所属タレントの愛情はすべてファンに向けられていなければならないのです。もちろんうわべだけであっても。ファンから見れば100%私のほうを向いてくれている、と思えなければならないのです。
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ですから、つまり簡単にいってしまえば、この場合の“ペット”は、彼女や恋人と同じものです。ファンにとつては、楽しい空想に縛りをかけてくるたいへんな邪魔者なのです。
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というわけで、ファンはそれぞれみな密かに、アイドルと自分との物語を紡いでいます。それは神聖にして、誰もおかすべからざる聖域です。魂の領域。そうした個々の聖域を抱えつつ集団化するということ。そこには、私の聖域を尊重してくれれば、あなたの聖域に手出しはしない、という暗黙の約束があります。
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コンサート会場でのふるまいなど、ファンのあいだで細々と定められているルールも、もともとはお互いの聖域を尊重しようという考えから生まれてきたもののように思います。
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約束が守られている限り、ファン同士の結束はたいへん強いものです。お金儲けのための結合などを遥かに超えた、取り替えのきかない、唯一無二の関係です。それを破壊しようとする外部からのチカラが働けば、総力を挙げて反発し、守ろうとするのはよくわかります。
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で、ここで留まっていられれば問題はないのです。しかし悲しいことに人間はひとつの場所には留まっていられない生きものなのです。最初はファン同士のゆるい結合体であったもののなかに、やがて上下関係が生まれ、権力構造がつくられていきます。これは、おそらく人が人である以上避けて通れないなりゆきだと思います。
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そしてやがて権力は他からの優位性を求め、あるいは内部結束を強めるために、言動を先鋭化させるようになります。最終的には、ただ力を誇示するために行動するところまで行きつきます。
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と、いうことで、ここでは、「どうしてそこまでやるのか? または、やるようになるのか?」に対する答えとして、ファンのグループは、みな心のなかにアイドルとの聖域をもち、それを守りながら寄り添っている、ということを憶えておいていただきたいと思います。
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今度は、Wikipediaによる、“「アイドル」とは、成長過程をファンと共有”するものだという指摘です。まったく異存はありません。よくJr.時代からのファンという話を聞きます。つまり小学生や中学生のころから応援していた、ということです。その彼らが努力を重ねてメジャーデビューを果し、コンサートなどで活躍している姿を見て思わず涙を流す、それもよくわかります。
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ここで少し意地悪なようですが、少し距離を置いて眺めてみましょう。「 成長過程をファンと共有」することが戦略的に行われていたとします。世間ではすでに「ジャニーズ方式」などといって、そのように見ているようです。
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思い浮かぶのはマクドナルドの子ども戦略です。いっておきますが私だけではないと思います。その点、なにとぞひとつ。つまりは子ども時代に顧客として取り込んでおき、その後の生涯を通して利用してもらおうという目論見です。この子ども戦略の対象は3歳〜14歳くらいまでとされていて、「味の記憶付け」と呼ばれているというお話もあります。
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味覚の発達については味の種類ごとの差があることはわかっています。しかし、具体的な発達のプロセスについては諸説があってはっきりしません。3歳までには決定されてしまうという説もあります。しかし、子どものころになじんだ味は忘れ難く、いつまでも食欲を感じさせることは経験的によく理解できます。
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では、実際にどんな手法がとられているのかというと、アメリカでは学校のファストフード給食事業にマクドナルド、ピザハット、ウェンディーズ、バーガーキング、ドミノ・ピザなどなどが猛烈な営業攻勢をかけているというお話です。まあ、だいたい考えることはみな同じというわけです。
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そんななか、マクドナルドの子ども戦略として最も有名なのは「ハッピーセット」でしょう。たとえば、《チーズバーガー+フライポテト(S)+コーラ(S)+おもちゃ》のセットで、価格は500円前後!! 利益度外視といわれている超お得です。
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ただ、店側からすると小さな子どもは親などの大人を連れてくるわけですから、「ハッピーセット」は、いまいまの販売促進効果も果しているわけです。ですから確実に利益は生んでいます。世の中そんなに甘くはない、と。
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「お子さまセット」の時代を含めると、「ハッピーセット」はすでに登場してから29年目になりました。もしかすると、あなたもマックの戦略にやられたひとりかもしれませんね。
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明日(3月18日)からはセットのおもちゃが『ドラえもん』に変わります。大のオトナでもオーダーOKです。でも、ちょっと恥ずかしいとおっしゃるあなたは、ぜひ、背の低いお友達とご一緒に。
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はい。それで日本の女の子たちは、マックにてなづけられたように、ジャーズにもてなづけられ、Jr.時代からずうっと、オトナになっても、オバサンになっても応援し続けるわけです。
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ファンもアイドルも、ずうっと時代を共有してもちあがっていくのですから、とくに演し物、テイストを変える必要はありません。ああー、あの慎吾ちゃんが刑事さんでねー、といった具合に、なにをやろうと慎吾ちゃんは永遠に初恋の慎吾ちゃんのままです。
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子どものときにファンとして捕まえてしまって、そのあとの生涯すべてをファンでいてもらうという戦略は、たいへん効率的です。そういうこともあり、ああいうこともあり、で、年齢的にその先頭を走っているSMAPが、モデルケースとしてたいへん注目されています。
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ですから、ジャニーズ所属タレントは40歳になっても50歳になっても、具体的なペットの話は原則NGです。ファンの心のなかの聖域を壊さないために、彼女や恋人はつくれない、ということです。
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アーマイガッ!! なんとも辛い話です。現実には結婚をしてそのレールから下りた人も何人もいますが、彼らはすでにアイドルとはまた違うポジションに立っているように思います。
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こうした「ジャニーズ方式」の誕生は、最初から意図したものではないでしょう。しかし偶然ともいいききれません。そこにはジャニー喜多川(84)の同性愛者としての資質が深く係わり合っているからです。
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はっきりいってしまうと、女と結婚して子どもをつくるという感覚がジャニー喜多川のなかにはない、ということです。ですから、ジャニーズからの“卒業”というオプションが最初から設定されていなかったのです。
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ここに、昨日の記事から2015年9月15日にTOKIO・国分太一(41)が入籍会見をしたときのジャニーのコメントを再掲しておきます。元資料は『サイゾーウーマン』です。どこか実感のない観念的なものいいです。さらに、これはやや脇道にそれますけれども、“結婚は結婚として”と語った先の部分に、いささか意味深なものを感じないでもありません。
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《ジャニー喜多川社長は、「(結婚を)奨励すると言うわけにはいかない」と前置きしつつも、「適齢期になったら遠慮なく結婚すべきです。将来、子どもも必要だしね。人として当然のことです。ただ、自分の責任のもとで結婚するわけで“人気が落ちたりするのはプロダクションのせい”だと思うタレントなんていない。結婚は結婚として、本人を(自分を)認めながら信じながら、結婚するんじゃないですか。当たり前のことです。その上で我々は応援するだけです」》
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よく、人気タレントを発掘するジャニーの素晴らしい眼力というようなことがいわれます。しかしジャニーの最大の功績、というかでかしてしまったことは、無意識のうちの男性性の剥奪です。そうして、ジャニーズは永遠に続く美少年たちの千年王国であり続けました。これまでは。
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千年王国の夢を描いたのはジャニー喜多川です。それを現実に管理・運営してきたのは、姉のメリー喜多川(89)です。現実には絶対不可能なものを束の間でも現出させようとするのですから、たいへんな力技です。幸か不幸か、殴るオバサン、メリー喜多川にはそれだけの膂力が備わっていたのです。
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ですから、メリー喜多川がいなくなったのちのジャニーズ事務所は、すぐに千年王国の神話のベールを取り払われ、とても奇妙な芸能プロダクションとしての姿を現すことになるでしょう。
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つまりメリー喜多川が没した後の男性アイドルというのは、男性性を取り戻すが故に、実に賞味期限の短い、次々に生まれては消える泡沫のような存在にしかならないように思う、という昨日の結論に到るわけです。
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そうした状況で、現在少なくとも500人はくだらないといわれているJr.たちを抱えるビジネスモデルが成立するのか? という問題も同時に出てきますね。おお、資産500億円以上と噂されるジャニーズ事務所の財政を心配するとは、なんとも身の程知らずな小市民ではございます。たいへん失礼をいたしました。(了)
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