2016年3月31日木曜日
「KARATE」、ベビーメタルの“ブルータルなMETAL”への回答
Official Siteに上がっているBABYMETALの新譜、「KARATE」と「THE ONE」をよく聴いています。どちらも楽しめるよい曲です。そして楽曲の意図を考えると、現時点でより重要な意味をもっているのは「KARATE」のほうだろうと考えています。そこのところを少し書いておきたいと思います。
*
「KARATE」が意図しているものはなにか? ひとことでいえばそれは“暴力”をどう扱うかという問題への回答、だと思います。METALにはつきものの“暴力”をどう昇華させるかを試みてみた曲、です。
*
PUNK以前の音楽には隠妙にしか見られなかった怒り、憎悪、暴力、破壊欲求などなどを、PUNKよりも肯定的に、というかさらにおおっぴらに扱って全面的にフィーチャーしたのが、HEAVY METALということができると思います。
*
ですからHEAVY METALのプレイヤーたちの筋骨隆々の肉体は必然(で、なければならない)であり、それ以前の大衆音楽のやさ男ふうミュージシャンたちと確実に一線を画しています。
*
*
怒り、憎悪、暴力、破壊欲求こそがHEAVY METALの本質であり基本なわけです。「KawaiiとMETALの融合」をテーマに掲げるBABYMETALにも、これらをどう扱うか、という問題がとうぜん出てきます。
*
もちろん、BABYMETALはアイドルが基本にあってのMETALですから、そうしたMETALの宿痾みたいなものはとりあわずに、独自の路線を行くこともできます。いま現在でもおおかたの見方はそんな感じではないか、と思います。
*
しかし、やはりMETALを主戦場、いや遊び場に選んだのですから、ここを遊び切らないとつまりません。というか、それこそがKawaiiとMETALの融合です。ここを楽しむべきなのです。それがBABYMETALです。
*
で、BABYMETALのスタッフはたいへん優秀なので、こうしたコンセプトワークにおいて、およそこの2年ほどはまったく完璧にこなしています。ミスがありません。偶然こうなっただけ、の可能性もまだ否定できませんけど。
*
たとえばオキツネ様、KOBAMETALの存在とそれを一貫してオープンにしていることはとても重要です。ここはアイドルであるBABYMETALのいわば核、原点です。ですから従来のMETALとはどれほどありようが違っていても、引っ込めたり誤摩化したりはできません。
*
もちろん、そんなことをしてしまっては、異質なもの同士の出会いのスリルという最初の狙いからも外れてしまうわけです。わけですがしかし、分かっていてもやりがちなのです。どうしても気が弱いので。そこをオープンにしたのは、やはりエラいと思います。
*
*
で、BABYMETALは「KARATE」で“暴力”をどう克服しようとしたのでしょう。まあ、まだ昇華できてはいませんけれども、ひとつ「敵はわが内にあり」という回答が示されています。MVに出てくる白装束の3人ですね。
*
MVの最後でこの白装束の3人の仮面が壊れるとき、Su-METALが「走れー!」と歌っていることにも着目してください。「ぶっとばせ!」「やっつけろ!」ましてや「殺せ!」などではありません。暴力はダメ。
*
MOAMETALがハエのような羽虫を素手で捕まえ、のちに群の中に離してやるエピソードは、どんな小さな命も大切に、殺生をしてはいけませんよ、ですね。最も愛を大切に。
*
あと、MV(曲のストーリー)が白装束の「内なる敵」からはじまっていること、「全部研ぎすまして」戦えという歌詞など、こまかく見ていくとまだいろいろ指摘できることはあります。
*
*
しかし、「敵はわが内にあり」はひとつの、しかも最も思いつきやすい視点の提示にすぎません。HEAVY METALの本質であり基本である“暴力”、人間だれしもがもっている暴力衝動についてのKawaii METALの回答は、これだけではまったく十分ではありません。
*
現実には紛争やテロ行為があり、暴力的な経済活動があり、さらに突然、襲ってくる理不尽な暴力もあります。家庭内暴力もあります。それらに対して目には目、歯には歯、という考え方もあります。
*
大上段に構えれば、“暴力”の克服は人類が抱えたとても大きな課題です。そして「THE ONE」、世界をひとつにするために必要なことです。BABYMETALにはこれからも、“暴力”の克服にさらにしつこく何度も何度も繰り返し取り組んでほしいと思います。
*
なにしろ 2013年の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でメジャー活動をスタートさせたBABYMETALです。やるべきです。それにたぶんここが「KawaiiとMETALの融合」の最もスリリングでおもしろいところでしょうから。(了)
登録:
コメントの投稿 (Atom)






0 件のコメント:
コメントを投稿