2016年3月3日木曜日
日本のテレビ局はすでに瀕死のメディア、らしい
『SMAP×SMAP』(フジテレビ)のプロデューサーが異動になったそうだ。番組の終了はほぼ決定である。しかしこんなふうに番組終了、あるいは大幅リニューアルの前に担当プロデューサーが異動させられたという話は、そうめずらしくもない。以前にも何度か聞いたことがある。
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異動は、プロデュース能力を疑われてというよりは、別の人間に任せたほうが最後の始末をつけやすいからだ。たとえば長く続いた人気番組ほど、そこに発生した既得権の意味はそれぞれにとって大きく重くなる。情も絡む。それをビジネスライクに整理するには、あまり内情に詳しくない人間のほうがいい。
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したがって『SMAP×SMAP』のプロデューサーが異動になったそのこと自体は別に驚くことでもない。しかし『SMAP×SMAP』打ち切りの原因に、例の“SMAP分裂騒動”→ジャニーズ事務所の社内問題があるのは誰の目にも明らかなのである。なぜこんな堅いいい回しになっているのかは知らぬが。
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『SMAP×SMAP』の前任プロデューサーは、飯島派だったのである。飯島派というのは、今年2月にメリー喜多川(89!!)によってジャニーズ事務所を放逐されたSMAP育ての親、飯島三智(58)の仲良しである。仕事仲間なのだからとうぜんである。
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で、『SMAP×SMAP』が終了したそのあとの枠では、メリーの娘でジャニーズ事務所の次期社長である藤島ジュリー景子(49)の仕切りで、ジャニーズオルースター的な番組がつくられるそうなのである。
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まあ、SMAPにもケチが付き、5人の晒し首みたいな生謝罪で番組自体にもキズがついた『SMAP×SMAP』にもはや展望はないし、ジャニーズオールスターでやってくれるというなら、フジテレビにもおいしい話であるのかもしれない。
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しかし問題は、テレビ局の番組編成が一介の芸能プロダクションの都合で簡単に左右されてしまっていることである。しかもフジテレビ内部でも、メリー&ジュリー派と飯島派とに別れていたというのだ。内部での呼び方は、メリー&ジュリー派が「J1」、飯島派が「J2」である。サッカーではないのである。まったく。
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いまのところ状況は圧倒的に「J1」有利である。SMAPに賭けて「J2」の下についた新人たちのすすり泣きが聞こえてきそうである。おおげさか。こうなったら「J2」の生き残り、中居正広(43)に頑張ってもらうしかないのである。
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で、去年の春頃に正広と熱愛の噂が立った局アナの竹内友佳(27)に白羽の矢が立っていると噂なのである。特攻作戦である。首尾よく運べば結婚披露宴中継でもやらかす魂胆なのであろう。しかしそんなことをいわれても、中居正広は完全な女性不信なのである。力づくでねじ伏せるしかないのである。
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力づくとは、厳密なスケジュール&体調管理をして妊娠してしまうのである。かつてのときのように飯島美智とジャニーズ事務所が結託し、総力を挙げて出産→認知を阻止する、などということはもう考えられないのである。正広、もうそれほど事務所から可愛がられていないのである。ここに持ち込めればおおいに勝算はあるのである。題して中居正広の「DVDはおあずけ大作戦」なのである。
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いまやテレビ局はジャニーズのいいなりである。番組の企画からキャスティング、共演者、プロモーションのやり方まで、すべてジャニーズの意向が反映されるのである。笑いごとではないのである。
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SMAP分裂騒動の際には、「独自取材はするな」という上層部からのお達しがワイドショーの制作現場に下りてきた局さえあるというのである。コメンテーターにあらかじめ発言内容を確認するなどはすでに常識なのである。ここまでくると、テレビ局はジャニーズ事務所の下請けかと疑ってしまうのである。
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テレビ局がジャニーズべったりだと、たとえばどんなに才能のある若手男性シンガーが出てきても、活躍できる場面は少ない。そうして若い才能を遠ざけ、ひいては視聴者を遠ざけてしまっていることを、各局には少しはまともに考えてほしいものである。
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いままでの話が、いわゆるジャニーズタブー。このほかにも芸能関係でいえば、周防郁雄率いるバーニンググループも、とくにスキャンダル報道にはなりふりかまわず圧力をかけてくるのである。バーニンググループはテレビに出ている芸能人の約70%を抑えているといわれるほどだから、これまたたいへんに厄介なのである。
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で、ジャニーズタブーの次、民放といえばやはりいちばんピンとくるのはスポンサータブーである。それをはっきりとわかるカタチでやらかしたのが、2005年6月3日の『朝ズバッ!』(TBS)、みのもんたである。
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もんた「皆さん、ビオフェルミンなんてお飲みになってるじゃないですか、胃腸薬。だったらビールを飲んだ方がいいくらい」と朝からいい調子で語ったのである。そうしたら、なんとそのビオフェルミン製薬が番組スポンサーだったのである。
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案の定、この放送の3日後にはみのが番組内で謝罪し、番組ホームページ上にも訂正文が掲載されるはめになったのである。しかしそれでもなお、発言から5日後にはビオフェルミン製薬がスポンサーを降板することになったのである。もんた、3日も引っ張ってはダメなのである。即座にその場で土下座しなければならなかったのである。
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もっと小さなエピソードなら、きっとたくさん山ほどあるはずである。私が実際に目にしたのは、ワイドショーで歯の磨き方を取り上げた際に、歯科医だか歯科衛生士だかが「歯磨き粉をたくさんつける必要はありません。お米一粒ぶんくらいで十分です」という発言をしたのである。で、ここでもスポンサーに製薬会社がついていて、ひと悶着おきたらしいのである。確認しようと思ったのだが、なかなか検索にヒットしないので申しわけないのである。
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話は横道に逸れる。むかし日本のほとんどの家庭の食卓に、化学調味料『味の素』の小さなビンが置かれていた時代があった。思い出した。いまはどうか知らぬが、そのころの『味の素』は結晶まるだしの姿をしていたのである。つまり写真などで見る覚醒剤そっくりだったのである。うむ。
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それで、とくに年寄りがありがたがって、漬け物なんかにジャリジャリ山になるほど振りかけていたのである。そしてそんなある日、『味の素』の社内で販売促進企画のコンテストが行われたそうなのである。最優秀賞に選ばれたのは「ビンのフタの穴を大きくする」という元も子もなーい思いつきである。世の中そんなものなのである。あまりといえばあまり、と噛み付いた社員に、上司がボソリと「ケツの穴の小さい野郎だ」と呟いたのである。ウソである。
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ともかく、民放はスポンサーからの広告料で成り立っているのである。民放のお客さまはスポンサーである。視聴者はそのお客さまを集めるための撒き餌みたいなものである。それをよーく思い知らせてくれたのが、乱一世(65)である。
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1997年8月、深夜の情報番組『トゥナイト2』(テレビ朝日)でCMに入る直前、乱一世は「この2分間にトイレに行かないと大変なことになります」と発言してしまったのである。結果、たいへんなことになりました。CMの時間にトイレにいっておいで、なのである。CMを見せるためのスポンサー契約なのに、である。
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乱一世はとうぜん番組を降板。しかしそれだけですむはずもなく、番組担当の取締役が減俸、情報局長と情報番組センター長は減給、担当プロデューサーが10日間の謹慎、さらにアナウンサー1名がけん責、と、生麦事件(1862)以来の凄惨な事態になったのである。視聴者にとってテレビはCMより番組である。しかしテレビ局にとっては視聴者よりスポンサーなのである。
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いやらしいのは政治的発言もタブー視されやすいことである。テレビ放送は、いちおう公正中立ということになっているからである。いやらしいと、いうのは、いったい誰が「公正中立」を判定するのかという問題が、きっと永遠にクリアされないからである。
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このジャンルでは前田武彦のバンザイ事件が有名である。1973年の参議院選挙で日本共産党公認候補を応援し、もし当選したら、と約束してその通り、司会を担当していた『夜のヒットパレード』のエンディング終了後に、バンザイをしたのである。当時、大橋巨泉と並ぶ人気者だったのだが、これ一発でほとんどマスメディスアから姿を消したのである。
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さて、「公正中立」といえば、ティラノザウルスみたいな顔をした高市早苗総務相である。2月8日の衆院予算委員会で、放送法に基づき、電波停止を命じる可能性があるという趣旨の発言したのである。もちろんこれには注釈がつく。政治的に公平であること、と定めている電波法の違反を繰り返し、行政が何度要請してもまったく改善しない場合 、である。
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とうぜん非難ごうごうである。知る権利が脅かされているのである。しかし早苗、あまりこたえていないらしいのである。遂には元アナウンサーの三百代言野郎、長谷川豊(40)のように、「高市大臣は法律に書いてある通りのことをいっているだけ」と擁護に回る輩も出てくる始末である。
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バカである。さっきも書いたが「公正中立」をいったい誰が判定するというのだ? うむ。それは総務相なのである。いまは高市早苗である。高市早苗は政治家である。政治家は主義主張をもっている。そういう人間が放送局の電波を停止する権限をもつというのである。恐ろしいことである。「公正中立」であれ、というのは、そういうことにはなるな、という意味なのである。
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こういう常識が長谷川豊には極端に乏しいのである。長谷川乏。バカなことをいっているヒマがあるなら、まずはもう1回、“全力取材”でもして、ベッキーからなにがしかのスクープをとってこい!! なのである。なにが必ず一両日中に重大発表がある!! だよ。腹立つ。元巨人軍監督。
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そんなこんなで、いまや日本の報道の自由度は、「国境なき記者団」年次報告書の「世界報道自由度ランキング」2015年版で、なんと61位なのである。過去最低である。耳になじみの名前の国のほとんどは、日本より上である。
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「世界報道自由度ランキング」は、評価を5段階に分けている。上から[1]良好な状態(=自由)、[2]満足できる状況、[3]顕著な問題のある状況、[4]深刻な状況、[5]非常に深刻な状況 である。日本は先進国のなかでただ1国だけ、[3]に属してしまっているのである。
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なぜ第3段階に転落してしまったかといえば、まじめに記すと、主には福島第一原発事故の発生以降、ますます露骨になった閉鎖的なメディア体制と、記者クラブによるフリーランス記者や外国メディアの排除、構造特定秘密保護法の成立などだとされているのである。過去、2010年には最高の11位にまでランクが上がっていたから、いわゆる皇室タブーの影響はそれほど大きくないと思われるのである。
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何度も触れているが、2013年9月7日、安倍晋三(61)がブエノスアイレスで開かれていたIOC総会の席上、2020年のオリンピック欲しさに、福島第1原発の汚染水について、「The situation is under control」 と大ウソを吐かなければ、メディア状況はもういかばかりかオープンだったはずである。
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しかも安倍政権、日本における「表現の自由」の状況を調査する国連特別報告者、デイビッド・ケイ(米カリフォルニア大学教授)の公式来日を、直前キャンセルしていたのである。昨年11月のことである。受け入れ態勢がととのわなかったからだそうだ。
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報道によれば、今回の公式来日では、施行から1年が経つ特定秘密保護法の現状や、自民党が報道番組をめぐってテレビ局関係者を呼びつけた問題などを調査するはずだったというのである。なんだか、これから報道、とくにテレビ局に対する締め付けはますます厳しくなる気配が濃厚なのである。
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スポンサーには威張り散らされ、政府筋からは圧力をかけられ、ジャニーズの餓鬼どもにはいいように引っ掻き回される。テレビ局も辛いのである。そのうえさらにはアナウンサーがデブだのブスだの、採用担当者のアタマがおかしいだのとまでブーブー文句をいわれては、たまったものではないのである。私がテレビ局なら、とっくに舌を噛み切って死んでいるのである。(了)
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