テレビのニュースで最近はますます夜の街の景気が悪く、飲食店向けテナントビルでは1棟丸ごと空室というところもある、と伝えていた。たしかにわざわざ繁華街まで飲みに出かけることはほとんどなくなった。仕事の打ち合わせを夜にやる習慣が消えたからだ。友達なんかいないし。
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続けてそのテレビニュースによれば、飲食店が撤退していったあとをそのままパーティルームとして貸し出すビジネスが脚光を浴びつつあるというのである。そこまではよい。よかったのであるけれども、その具体的な事例として紹介された「サザンオールスターズのファンの集い」の映像にたいへん激しい衝撃を受けたのである。
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もとはクラブかスナックかというゴージャスなパーティルームに、およそ30人ばかりのサザンオールスターズのファンの皆さんが集まっておられたわけである。平日の昼間のこととて女性、それも主婦が中心。40代とおぼしき方々もいらっしゃるにはいらっしゃるのであるけれども、ほぼ半数はシッワシワなのである。シワの巣。しかもカラオケだのイントロクイズだので大はしゃぎしておられるので、さらにシワシワクシャクシャ。どうして皆さんこのような地域のニュースで顔出しをOKされたのであろう? いささかありがた迷惑であった。
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サザンオールスターズや桑田圭祐(60)のファンのかなりの部分が主婦層で占められているらしいことは知っていたけれども、改めて目の当たりにするとインパクト甚大であった。百聞は一見に如かず。であるから桑田圭祐の『ひとり紅白歌合戦』などもただのシャレなどではなく、綾小路きみまろ(65)のライブのごとく本気のオンタイムの演芸として見なければならないと気付いたのである。桑田圭祐、ヤングきみまろであったのである。
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サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューしたのが38年前の1978年であり、桑田圭祐はすでに還暦であると考えれば当たり前の話なのかもしれない。当たり前なのかもしれないのではあるけれども、それにしても結局はこれかー、な気分はある。口にするのも恥ずかしいけれども、もう少し痕跡を残せなかったものであろうか、と楽しそうに弾けるシワッシワを思い出しながら考えるのである。
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では、たとえばいまの20代はなにを聞いているのであろう? 思い浮かばない。サカナクション、THE BAWDIES、SEKAI NO OWARI、9mm parabellum bullet、ONE OK ROCK、MAN WITH A MISSION 、マキシマムザホルモンなどなどいろいろと名前は挙がってくるけれども、“これがいま若者に人気の音楽”というにはいまいち影が薄い。ゲスの極み乙女。はお姉さんのいるスナック用の音楽である。らしい。
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なにを聞いているのであろう? 「選択肢がたくさんあって拡散している」、といういわれかたもしている。けれども、最近の若者が積極的に聴いている音楽はコレ! な感じがないのである。 それとほぼ同じ意味あいの別表現、「自分で見つけた音楽を聴いている」にしても自分どまり、数的に少なく内向きの雰囲気が強くてひとつの潮流としては捉えづらい。
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これについてなにか資料がないかと探したら日本レコード協会が発表した「音楽メディアユーザー実態調査」(2015年9月調査)というものがあった。集計の結果発表は今年の3月である。「主に音楽と対価との関係から見た、世代・経年における音楽との関わり合いに対する姿勢、考え方の相違」というところを見てみよう。この調査では、以下の4つの層のなかから自分があてはまるものを選んでもらうという方法をとっている。
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◆有料聴取層:音楽を聞くためにCDや有料音楽音源など音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある
◆無料聴取層:音楽にお金を支払っていないが、無料動画サイトやテレビなどで新たに知った楽曲を聴いた経験がある
◆無関心層(既知楽曲のみを聴く):音楽にお金を支払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴かず、新曲は(テレビなどでも)聴かない
◆無関心層:音楽にお金を支払わない。特に自分で音楽を聴かない(音楽には特段積極的な好意、関心を持たない。音楽への本当の意味での無関心派)
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【回答】
[学生(12歳〜19歳)]
◆有料聴取層:51.0%
◆無料聴取層:23.7%
◆無関心層(既知楽曲のみを聴く):11.3%
◆無関心層:14.0%
[20代]
◆有料聴取層:50.2%
◆無料聴取層:13.9%
◆無関心層(既知楽曲のみを聴く):17.6%
◆無関心層:18.2%
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であった。積極的にお金を払って音楽を聴こうとする層は半分にしかすぎない。しかもこれ「音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」なので、いつもそうであるとは限らないのである。こんな状況であるので、音楽で当てて一攫千金というのは、もはや完全にむかしの話である。
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その「購入したり、お金を支払ったりしたことがある」約半分の人たちがなにを聴いているかといえば、まあ、おそらくAKBだとかジャニーズだとかEXILEだとか、あとはときどきのヒット曲であろう。であるから、若者がなにを聴いている? と聞かれれば、まずはAKBとかー、ジャニーズとかー、EXILEとかー、いま流行っているヤツ、と答えるべきだったのであろう。
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しかしその、たとえばAKBの音楽にお金を払ったことのある方々のうち、どのくらいがきちんと聴いているのかは、はなばだ疑問である。しかも音楽に無関心な層が「学生」で14.0%、「20代」で18.2%もいるのである。聴くのはむかしの曲だけという層を入れれば、それぞれ25.3%と35.8%。日本の若者の「音楽との関わり合いに対する姿勢、考え方」はそうとう貧しい。
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であるから、そうなのである。いまの20代、若者はどんな音楽を聴いているのか? という問いへの正しい答えは「聴いていない」であるような気がするのである。アイドルとの握手や応援の投票をするために買うCDなどは、音楽にお金を払ったとはいわないのである。
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国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2016年9月15日発表)によると、未婚者(18歳〜34歳)の男69.8%、女59.1%に交際している異性がおらず、独身男の約3割は交際したいとも考えていないという結果が出ている。音楽を聴かなくなった傾向とどこかで相関しているような気がする。
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かつて「J-POP」の位置には「歌謡曲」があった。「歌謡曲」は戦後のもので、戦前ということになると、よく引き合いに出される川上音二郎(享年47)の「オッペケペー節」(1891・明治24)に代表される演歌や民謡、そして一部に外国直輸入のジャズということになる。それ以前、日本の大衆音楽といえばほぼ民謡である。大衆音楽というより民族音楽。
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日本の若者は音楽を聴かないけれども、もともと日本には西欧に匹敵するほどの大衆音楽の歴史はなかったのである。それほど心配することはない。あれ? これは以前にも書いたかもしれないけれども、日本人の感性を支配していたのは音楽よりも鳥や虫の声、風の音、雨音という自然の音であり、人工の音、音楽からすると「沈黙」だったのだろうと思うのである。
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であるから現状のいわゆる“音楽離れ”もさまざまな音楽の氾濫のなかで、再び「沈黙」がその領地を拡大してきたということなのだろうと思う。そして「沈黙」はなかなか素晴しい。じっと耳を済ませているといろいろな思いが浮かぶ。考えが湧く。音楽はいちど沈黙に還り、そこから復活すればよい。
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「沈黙」は都会暮らしにとっては貴重品である。このあいだの大雪の日にも、やっぱり雪の降り積もる音は聴こえなかったのである。ほぼ毎日、大音量でBABYMETALなどを聴いている耳だし。いつか時間をとって人里離れたところへ、雪の降り積もる音を聴きにいきたいものである。
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おお、そうだ。そのときには中国人観光客から恵んでもらったフリースのお下がりを着ていこう。私の場合、「音楽との関わり合いに対する姿勢、考え方」が貧しいどころの話ではないのである。生活に対する経済、その考え方がひどく貧しいのである。(了)
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