2016年5月30日月曜日

ウエンツは「呆れ」、小悪魔ぶりには「称賛」。ネットニュースの世界



ネットでニュースを読んでいると「〜に称賛」、「〜に絶賛」、「〜に呆れ」というたぐいの見出しが目につきます。ほかのメディアで報道されたものをそのまま引用、というか紹介する場合、よくこのカタチになるようです。



ネット以外の、たとえばスポーツ紙でこうした見出しが躍っている場合は、ほんとうは編集が称賛、絶賛、呆れたいのですけれども、それをダイレクトに記事に書くといろいろ差し障りが出てくるので、さも誰かの意見、世間一般の反応らしく書いてある場合がほとんどのようです。



さらに一般紙では、これに近い手法として、いわゆる“専門家の見方”というものがむかしからあります。ニュース記事の横にくっついているやつです。みなさんすでにご承知でしょうけれども。



少しご説明をさせていただきますと、これは、公正中立が立て前の一般紙では編集の意見をそのままは書けないので、編集が考えている方向で喋ってくれる人を選び、コメントを依頼して記事にするというものです。



とくに政府発表などであまりに一方的な内容だと思われる場合、バランスの取れた情報を提供するために、あえて相反する“専門家の見方”を掲載する場合もあります。



しかし、そういう内容の問題をすべてほったらかしにして、ただ手間のかけかたということでいうと、ここでは、一般紙のやり方からコメント依頼の手間を省いたものがスポーツ紙のやり方であり、スポーツ紙のやり方から、そもそも編集の意見や判断まで省略してしまったものがネットのやり方、ということができます。うむ。お手軽です。



もうひとつ、ニュースの鮮度ということでいえば、とうぜん一般紙→スポーツ紙→ネットニュースという順番になります。印刷・流通の手間が省けるネットニュースがもっともスピーディでかつ鮮度も高いと思われがちですが、それはまったく逆です。元ネタのほうが、それをリライトした記事よりも鮮度が高いのはあたりまえです。



ちなみに、新聞社系のネットニュースにしても、本紙との兼ね合いがありますから、デジタルの強みをフルに発揮できているとはいえません。本紙が売れなくなると困ります。ですからネットに上げるのは本誌が発売されて一定期間が経ってから、とか、内容はダイジェストで、とかいうことになります。



こう考えてくると、ネットニュース、あまり旗色はよくありません。しかしこのお手軽さが新しいニュースのジャンルを生み出しているのです。テレビやラジオ番組内でのタレントの発言を、そのまま芸能ニュース、時事ニュースとして取り上げるというヤツ。記者はどこへも取材に行かず、ずっとテレビやラジオの前に貼り付いているというヤツ。



これはこれで、まったくくだらないといえばくだらないのですが、なんとなくおもしろい感じもあります。これまでタレ流しにされていたものに再考の機会が与えられるというだけで、なにか可能性の芽みたいなものが……。おかげさまで「田中みな美の最後のキスは半年以上前」だとか、どうでもいいガラクタでアタマのなかがいっぱいになりますけれど。



「〜に称賛」、「〜に絶賛」、「〜に呆れ」は、ほかのメディアでの報道をそのままネットで引用、紹介する場合によく使われると書きました。しかし詳しく見ればいろいろと細かな違いがあるようなので、もう少し掘り下げてみます。



おっとその前に、「〜に称賛」、「〜に絶賛」、「〜に呆れ」という見出しには、報道される事柄に対しての評価を決定づけ、さらに押し付けるはたらきもある、ということを指摘しておきます。エラそうですけど。露骨な世論誘導、世論形成ということもできます。そこのところ、よくご理解のうえ、お読みいただきたいと思っております。



それでは、まずはただひたすら拡散を目的として他メディアの記事を紹介している場合です。世論誘導、世論形成の典型です。



ネットニュースのタイトル:
[竹内結子「真田丸」の茶々役でみせる小悪魔ぶりに称賛]

紹介されているオリコンの記事のタイトル(2016年5月29日配信):
[『真田丸』で好演中の竹内結子、36歳にして違和感ない“小悪魔”ぶりに賞賛]



えっと、「称賛」とは褒め称えることで、「賞賛」とは賞状だとかトロフィーだとか賞金賞品をあげて褒めることです。ですからこの場合、表記の正しいのはネットニュースのほうです。頑張れオリコン!! そしてこの2本のタイトルは、もちろん、ネットニュースのタイトル→オリコンの記事のタイトルの順に目に入ってきます。



で、記事本文を読みますと、ドラマのなかの茶々のキャラクターと女優竹内結子の魅力を重ねあわせて論じたもので、称賛も賞讃も誰もしてはいません。スポーツ紙と同じやり方で、さも誰かが称賛しているように見せかけてもちあげる、というヤツです。



オリコン編集部、いろいろなプロダクションであるとかメディアであるとかとうまく付き合っていかなければなりません。ここで率直に「竹内結子は素晴らしい」とは書けないオトナの事情に絡めとられているわけです。せっかくなので一部ご紹介しておきます。けっこうリキが入っています。



『竹内結子演じる茶々が『真田丸』に登場したのは14話。秀吉の元に滞在する信繁の前に現れ、「あなたアレでしょ? 真田ナントカ、フフフ」と満面の笑みを浮かべかたと思えば、オロオロする信繁の顔を両手で挟み「わりと好きな顔!」と言い放つ。これにはネットでも、「こんなカワイイ茶々、初めて見た!」「お姫様って感じでいい」と評判に。竹内自身も、茶々のことを「危ない人ですね」と評し、「とにかく無邪気でありたいと思って演じていますが、ボディタッチも多くて。そういう行動が、小悪魔的で相手の誤解を招くのかもしれません(笑)」と語っている。

このときの茶々は史実的にはハイティーンの年頃で、竹内の演技が“無邪気”であることも納得だ。だが、「竹内結子、若すぎる」という意見も見られたように、彼女は現在36歳、実際の役柄とはかなり開きがある。にもかかわらず、無垢な少女のような小悪魔ぶりに違和感がないのは、まさにベテラン女優の力量というべきか。また一方で、幼少期からの過酷な運命ものぞかせつつ、秀吉の子供を身ごもった際には、本当に自分の子かを疑う秀吉に「父親は源次郎(信繁)です」と冗談を飛ばして翻弄する一幕も。そこには、舌でも出しそうなイタズラな小悪魔ぶりと、秀吉(この疑惑によりすでに何人も殺害している)をも煙に巻く豪胆さがあった。裏がなくて無邪気だけれど、少しばかり怖さも感じる。こういった複雑な戦国の女性像を表現するには、単に若手の女優ではなく、竹内がうってつけだったのかもしれない。』



竹内結子からなにかもらっているのでしょうか? 読んでいるこちらが気恥ずかしくなるくらいのヨイショです。さて、えっと、次は編集の願望のために「〜に称賛」、「〜に絶賛」、「〜に呆れ」が使われているケースです。



ネットニュースのメニュー欄タイトル:
[復帰のダルビッシュに絶賛の嵐]

ネットニュースの本編のタイトル:
[ダルビッシュ有が復帰戦で好投 初コンビの女房役から絶賛の嵐]

紹介されているスポニチアネックスの記事のタイトル(2016年5月29日配信):
[ダルに絶賛の嵐「全てが良かった」 初コンビの女房役「想像通り」]



うむ。メニュー欄のタイトルを見るかぎり、まるで全米から拍手喝采が、という印象です。しかし実際は、試合でコンビを組んだキャッチャーが称賛したというだけのお話です。このキャッチャー、ひとりで嵐を巻き起こすとは、なんてスゴいヤツなのでしょう。



わかります。スポニチとしてはダルビッシュ有の復帰でナントカ華々しく紙面を飾りたかったのでしょう。確実に売れます。しかしこの書き方ではすぐにバレてしまいますね。そして逆に、それほど大々的な反響はなかったのだな、と勘づかれます。



それでも記事の一部をご紹介しておきます。なんといいますか、オトナに頭を撫でられて喜ぶ子どもの態でおもしろいので。



『中でも速球の力強さは目を見張ったという。「98マイル(約158キロ)の直球もあったし、今日は特にシンカー(ツーシーム)が凄く良かった。90マイル(約145キロ)をゆうに超えていたね」と速球系中心の組み立てとなった理由を説明した。

また勝負所では左打者の外角に決まる通称バックドアや、右打者の外に逃げていくスライダーのいずれもが落差があり、精度も高かった。「外角のスライダーがどの打者にもよく決まっていた。カーブも良かった。今日は全てが良かったんだよ」と振り返り続けていくうちに絶賛の嵐となった。』



で、最後は最もニュースらしくないニュースです。テレビ番組『ワイドナショー』(フジテレビ)でのタレントの発言内容をそのままニュース化するという、もっともお手軽な、そして新しいジャンルのニュースです。



ネットニュースのタイトル:
[ダウンタウン松本人志がサラリーマン川柳に辛辣意見 ウエンツ瑛士が呆れ]

紹介されているトピックニュースの記事のタイトル(2016年5月29日配信):
[ウエンツ瑛士 松本人志のサラリーマン川柳批判に呆れ「こんなにキレてるなんて」]



まずは見出しが、報道される事柄に対してのジャッジ、評価のために利用されています。つまりここでいうと、松本人志は間違っていたんじゃないのー、ということです。私はどちらかといえば松本人志のほうが正しいと思いますけれど。本文をご覧いたたきましょう。



『番組では、23日に発表された「第29回 第一生命サラリーマン川柳コンクール」を話題に上げた。一般投票で6305票を獲得した大賞には、小型無人飛行機「ドローン」に引っ掛けた「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」が選ばれている。

MCの東野幸治が1位の句を紹介すると、松本は「これね、何にも掛かってない」とバッサリ。ゲスト出演したナイツの塙宣之も「ドローンの話になってない」と作品の内容に違和感を示す。

松本は、今回のテーマが「ドローン」なら1位の句は「面白くない」ものの合格ラインという。だが、「ドローン」という言葉以外にドローンを連想させるような表現が使われていないため、松本は「全然1位じゃないから!これを決めた奴のセンスを疑うよ!」「プロはまったく納得してないよ!」と猛批判する。

東野が、1位の「ドローン」はドロン(姿をくらます)と、最近脚光を浴びているドローンが掛け合わさっているのだと説明しても、松本は「そんなん知らんし。関係ない!」と反発したのだった。

すると、そんな松本の姿を見たウエンツは「(川柳を投稿した)一般の人にプロがこんなにキレてるなんて」とげんなり。これに対し、松本は「違うねん。この1位の人にキレてるんじゃないねん」と投票側へのダメ出しであることを強調する。

しかし、ウエンツは、サラリーマン川柳が、その年の流行や世相を取り入れながらサラリーマンの悲哀をユーモラスに詠う作品が多いとして、「そこを分からないプロがいるなんて」と呆れたのだった。』



松本人志は技術的に見るべきものがない作品を1位に選んだ一般投票者たちにダメ出しをしているわけです。1位になった作品もよろしくないけれども、問題はそれを選んでしまった一般投票者だ、と訴えているのです。それをウエンツと、そして『トピックニュース』の編集は、ただ「一般の人」ということでごっちゃにしてしまっています。



で、たぶんこの問題の背景には、プロである松本人志が客である「一般の人」を否定している!! という衝撃の大きさがあったと思うのです。客がおもしろいといっているものをおもしろくないというのか? ではお前はなにを基準にお笑いに取り組んでいるのだ?



そうです。ニュースの新しいジャンルの可能性はこういうところにあるのです。たかがネットニュースになにをぐだぐだ、ですけれども、そのぐだくだに批評の……。いや、そのぐだぐだがニュースになる日まで、私は頑張ります。ひっそり人知れず。(了)


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