ビートたけしと北野武のしめくくり

「日本はまずとにかく、カムフラージュの謝りかたじゃなくて『申し訳ない』とはっきり詫びるというか、カタをつけないとダメでしょう」「話し合いで補償もしたはずなんだけど、武士道みたいにはっきりさせて腹切って見せるほうがいいんじゃないかと思うんですよね」

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ビートたけし（68）の発言だ。はっきり詫びてカタをつけるという考え方はもっともだが、この発言、お二階に上がっているというか、ご隠居感が漂って少し淋しい。「腹切ってみせるほうがいい」というくだりである。

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もちろんたとえ話である。しかしだからといって具体的な中身が窺えるわけではなく、言葉ヅラだけ時代がかって勇ましい。こういう話し方は現役を引いたばかりの年寄りがよくする。振り返れば本家に200万円支払ったという「コマネチ！」からおよそ35年も経っているのだ。

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しかし説教臭いジジイにはなってもらいたくない。政治や社会問題について語ってほしくないのである。それはビートたけしの仕事ではない。やはり素人だし、町のご隠居の、庶民の代表的な扱い方におさまるほど良識的なスタンスにもいない。ご意見番なんてもってのほかだ。まあ、時事はいいよ。ジジだから。

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ビートたけしは徹底的に東京下町の人である。現住所はともかく。若い連中をつかまえて、「アンちゃん」「おネエちゃん」である。意識的に故郷の下町から離れない。であるから、これからのビートたけしには、東京下町の不良ジジイを全開にしてもらいたいのである。

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具体的にはというと、まずはネタ中心のトークに回帰する。いまさら毒ガスでもないし、かつての浅草界隈のヨタ話＋最近の芸能ネタジジネタなんかがいい。ツッコミは、へビジ（ビートキヨシ65）には申し訳ないが不要である。本人もこれからは落語だという発言をしているから、それなら漫談あるいはスタンダップコメディである。もう先が短いのだから落語を覚えている暇などない。

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で、世界の北野武にもお願いがある。ぜひビートたけし主演で「男はつらいよフーテンの寅」を撮っていただきたいのである。もちろんそのままというわけではなく、“フーテンの寅ってあちこちブラブラしているあいだ、ちょっとは悪いこととかしてたでしょ？”という我々の長年の疑問に答えるリブートを。

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だから、いってみれば“黒いフーテンの寅”、“車寅次郎テキ屋番外地”みたいな。山田洋次（83）にはくれぐれもバレないように。

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真面目な話、世界の北野武としてしっかりした東京下町映画を１本撮るべきだと思うのである。そしてオランジーナのリチャード・ギア（65）や「ALWAYS 三丁目の夕日」や、小津安二郎（享年60）、さらについでに恥ずかしがらずに「フェリーニのアマルコルド」や寺山修司（享年47）の「田園に死す」にも、一矢報いてほしいのである。いや、まあ、とくになにか被害にあったというわけではないと思うが。　　（了）



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